3. 市民組織と運営の実際
(1) フィールドの確保
運営組織がある程度できあがってくると、いよいよ実際に活動する場所を確保しなければなりません。自分達で里山を所有していたり、買い取るだけの資金があれば問題はないのですが、多くの場合、これから始めようとする活動の趣旨に賛同し、里山を無償で貸してくれる人を探すことになります。そこで、まず訪ねることをお薦めするのは公有林の管理者です。公有林の管理はふつう、都道府県または市町村の、農林水産部や林務課など「林」のつく部局が担当しています。
府県や市によっては、緑の環境整備室や公園緑地課のように、「林」のつかない名の部局が担当していることもあるので、案内係によく聞いてみてください。スギ・ヒノキの植林が進んだとはいえ、公有林にもまだまだアカマツ林や雑木林が残っています。スギ・ヒノキ一辺倒の時代が過ぎ、天然林が重要視されだした今日では、その保全・管理と意義のある活用法は、これからの課題ともなっています。ですから、活動の場として貸してくれる、あるいは使わせてもらえる余地は十分にあるわけです。
また、公有林に適当な里山がない場合には、森林組合や活動に協力が得られそうな民有林の持ち主を紹介してもらえるでしょう。ところで、資金もなければ、知(地)縁も血縁もない市民グループが、公有林を貸してもらったり、森林組合や民有林の持ち主に紹介してもらうには、それなりの用意が必要です。その用意とは、里山管理に対する情熱と計画性と信用です。市民に用意できるのは、これだけでしかないわけですが、これこそが最も大切なことなのです。この情熱と計画性と信用は、単に活動の場である里山を確保するのに必要なだけでなく、今後の活動の成否を握るカギでもあるのです。
もちろん実績のない市民グループには、最初から信用と言っても無理な話です。しかし、里山の自然や管理についての基本的な知識を吸収し、これをもとに自分達の実力に応じた地道な、しかも説得力のある計画を立てるには、それなりの情熱がなければできません。それができれば、おのずと信用もついてくるものです。
公有林、民有林のいずれの場合も、実際に貸してもらえることになると、借地への立ち入りや、使用する上で守るべき事項を書いた誓約書または借用書を提出し、その写しか許可書をもらうのが普通です。