2. 森林構造の多様性
里山の自然の多様性を育むには、かつて15〜20年周期(アカマツ林の場合は30年程度の周期)で伐採されていた、薪炭林の管理体系を復活させるのも有効な方法です。森林をモザイク状の小林地に区分し、毎年または数年間隔で順番に伐採して、これを循環させれば、そのまま目的を果たすことができます。これには伝統的な里山管理のシステムを動態保存して、観察・体験させることができる効果もあり、実際、英国の自然保護区では、このような目的や形態で管理されているものも珍しくありません。こうすることによって、炭焼き用の材料の生産やシイタケ栽培用のほだ木生産とも連動できるからです。
ところで、クヌギ・コナラ林とも言われるように、薪炭林にはクヌギとコナラの純林が多く、整然としたその林相は美しいものです。だから、それはそれで是非とも維持したいものです。しかし、ヤマザクラやクリ、コブシ、シデ、エゴノキ、リョウブなど、多様な落葉広葉樹が混交するほうが、自然の多様性の点では一層望ましく、特にヤマザクラ、ホウノキ、カツラのように、家具材や彫刻・工芸材になるものは経済的にも付加価値が高いからです。かつての薪炭林でも大きく育てて商品価値を高めるために、伐採更新期がきてもこれらは残されることがよく行われていました。このような里山では、雑木林のところどころに大きな樹木がこんもりと樹冠を広げ、ヤマザクラの咲く頃などは、たいへん美しい景観が楽しめます。