谷川…四十九日というんですけれど、仏教に妥協したとはいえませんね。
山折…必ずしもそうではない。ある段階までは、死者の魂はこの世とあの世の間をさまよっているという感覚でしょう。仏教が葬式仏教だといわれるのも、魂に関するそうした千年の歴史があるからなんですね。
谷川…その期間は生者からすると、四十九日の魂の手触りの感触が残っているのかもしれない。
山折…我々は無神論の世界に生きていますけど、ひとたび自分の命が危機的な状況に襲われたり、肉親に死なれた場合ですね、深層に眠っている魂の実感というか、霊的なものに反応する感覚や意識がにわかに浮上してくるということがありますね。それがそもそもに文化というものの実感、あるいは伝統というものではないでしょうか。
谷川…わたしの母親が亡くなった時、遺骨が置いてある部屋にセキセイインコが入って来まして、籠に入れておいたのですが、翌日死にました。そして、あくる日にまたセキセイインコがやって来ました。この鳥はずっと飼い続けました。蝶とか鳥などはやはりなにか感じるものがあります。
山折…蝶や鳥ではないのですが、こんなことがありました。