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対談・魂のゆくえと他界観…山折哲雄+谷川健一

 

盆踊りの原型

 

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やぐらの傍に立つ切籠燈籠(新野の盆踊り 撮影・木下好枝)

 

谷川…盆行事のことだけでなく、日本人の生と死や鎮魂をテーマに魂の問題を話していきたいと思っています。昨年の二千年八月十六、七日に長野県下伊那郡阿南町新野の盆踊りを見に行ってきました。柳田國男や折口信夫も注目していた盆踊りでした。

 

山折…私も一五、六年前ですが行ったことがあります。阿南町には何ヵ所かで盆踊りを行いますので、谷川さんが見た盆踊りとは違うかもしれません。心打たれるものでしょう。

 

谷川…道のわきにやぐらを建てて、やぐらの上に音頭とりがいて、その人に唱和するように歌を歌いながら踊る。太鼓とか三味線の楽器はいっさいないのです。初盆の家族は大きな切籠燈籠(きりことうろう)をやぐらの傍に立てるのです。徹夜で踊った翌朝、十七日の朝に切籠燈籠を先頭に村人は村境まで行くのです。その時、切籠燈籠を持つのが、新盆の家の小学生とか中学生たちの孫なんです。切籠燈籠の列が進むとその前を踊っている人たちが輪を作ってとうせんぼうをするのです。その輪に近づくと輪が解け、先へ行くとまた輪でとうせんぼうする。そうやって亡くなった人と名残惜しむのです。

 

 

 

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