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新野の盆踊りと切子燈籠…池田勇次

 

私は今年の八月十六日に「青」の会(主宰 谷川健一氏)に誘われて、新野の盆踊りに参加し、そこで見た踊りと切子燈籠に深い感動を受けたのである。

新野(にいの)は、長野県下伊那郡阿南町の南端にあって、三河(愛知県)との県境にある標高八百メートルの盆地で、古くから交通の要衝として、また宿場町として栄えてきた所である。新野には毎年一月十四日に行われる雪祭りがあり、里人の体を借り降臨する神々の舞の中で、人々は五穀豊穣・子孫繁栄を祈るのである。

新野の盆踊りは、国から重要無形民俗文化財に指定されていて、私がこれまで見て来た盆踊りの中では最も優雅であり、八月十四日から十六日までの三日間徹夜踊りをするのである。楽器は一切使わず、扇を一本持って踊る「すくいさ」「おさま」「音頭」「おやま」と、手踊りの「高い山」「十六」で、それぞれ音頭を取りながら交互に踊る。

これに十七日の朝、新盆の精霊たち(行列)を前にして踊る「能登」があり、全部で七種類の踊りである。

新野の盆踊りについては、谷川健一氏の名文があり付け加えることは何もないが、今年の盆踊りが以前と比べどのようになっているかを、参考までに若干述べてみたい。

十六日の夕方になると、新仏(前年八月から今年七月末までの死亡者)を出した家から切子燈籠が持ち出され、櫓の下に飾られる。櫓にはしめ縄が張られ、切子燈籠が二十六基飾られていた。

 

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夜が明けたが踊りは続く

 

 

 

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