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こんなふうに、奄美の秋から冬は、半年間を色々と形を変えて吹く北風の季節風の情緒と共に過ごしますが、雪も降らず霜も降りない日本の南島としての、面目をも保っているのです。

 

今では、奄美の八月踊りも、古来の形や情緒は少しずつ変えられながらも、現代の人々の好みに合うように形作られて、伝統芸能として持続しています。

一時期は、奄美方言が失われていくと、方言で歌われる島唄はもう歌える人が居なくなり、当然八月踊りもやがて近い将来消え去ってしまうのでは、と危惧されました。だが伝統芸能の存続のための趨勢が芽生え、今では小学校から高校まで、運動会の中に、八月踊りを全校生徒で踊る科目を取り入れるようになり、激しい盛り上がりを見せています。

ここ四、五年来、地方の伝統芸能が見直される風潮が、奄美にも起こりまして、八月踊りも息を吹き替えし、より盛んに踊られるようになりましたので、消え去る将来への危惧は、少し薄らぎつつあるようで、安堵させられてはおります。

でも方言は確実に使われ無くなってゆきますので、いずれはすっかり失われるものと思えます。その時奄美の八月踊りがどんな風に、伝統を維持していくかは、奄美の人々の努力に期待する外は無いのだ、と思います。

…<詩人>

 

撮影=越間誠

 

 

 

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