4. 歴史的景観を活かす自然環境の保全活用の検討
(1) 歴史的景観を活かす視点の検討
1) 歴史的景観の考え方
渡名喜島は面積3.46km2、周囲12.5kmの小島である。サンゴ礁の平坦な島とは異なり、南北2つの山丘が分かれて見えることからかつては“ターマタ(二股)”とも呼ばれた。島全体の景観的骨格は、その二股間の砂地の上に形成された集落を中心として同心円状に農地―山丘―イノーが取りまく重層構造にある。
土地利用の重層構造は、島の先人が長い年月をかけて島の自然との関わりの中で選択し築き上げてきた空間的秩序であり、同時にその重層構造によって島人の生活文化が育まれてきたとも理解できる。島全体が県立自然公園区域であり、集落域が国の重要伝統的建造物群保存地区である渡名喜島において、この土地利用の重層構造は将来にわたって継承していくべき渡名喜島の景観的骨格として共通認識しておく必要がある。