<渡名喜村史にみる島の植生>
渡名喜村史にみる島の植生の概要を村史の地域分けにしたがって、海浜植生、低地部植生、山地部植生に大別し、以下のとおりに整理した。村史発行から約20年が経過し、現状と変化している点もあるかもしれないが、当時の貴重な資料として記述する。なお、現在の島の状況については、『3. 外来植生の在来植生に対する影響と対策の検討』を参照していただきたい。
【渡名喜村史(上巻・第一部 渡名喜の自然、第二章 植物)昭和58年発行より】
a. 海浜植生
海岸には隆起サンゴ礁からなる岩礁海岸の発達は見られないが、砂浜はアガリ浜、アンジェーラ浜、タカタ浜、ユブク浜、ウー浜などがあり、それぞれの砂浜の広さや浜堤の発達に応じて、汀線から陸側へと海浜植生の発達が見られる。これまで識別された主な群落は、砂浜前縁の不安定帯にはハマニガナ群落、ハマニガナ-ハマヒルガオ群落、半安定帯にはコウボウシバ群落、グンバイヒルガオ群落、ハマササゲ群落、ハマゴウ群落、ツキイゲ群落などが、浜堤に続く安定帯にはクサトベラ-モンパノキ群落、アダン群落などが識別されている。アンジェーラ浜は広く砂浜植生の典型的出現パターンを見せている。また、一部の浜ではカワラナデシコが海浜植生として出現している。この島ならではの珍しいことである。
浜堤の後方にはアダン群集につづいて海岸林の発達が見られるのが一般的であるが、本島では急峻な海崖が多く、砂浜に続く低地部は耕作地として利用されていた為、現在海岸林として群落の形態・構造を示すほどの※林分は見られず、海岸林の※林相を思考させる林分の一部がタカタ浜やユブク浜に見られるにすぎない。
※林分…森林の成立・樹種・年齢・性状・生長など種々の関係から見て、森林施業上一定の取り扱いを受ける森林面。〔広辞林〕
※林相…森林の形態。〔広辞林〕