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これら貴重植生の保護管理体制を確立し、環境の復元を進めていくことも大きな課題である。

一方、一般市民などを対象とした利用面の対策も不十分なことから、施設整備などのハード面の整備はもちろんのこと、利用を促す情報提供や利用プログラムの開発も重要な課題である。

さらに、これまで浮野の魅力ある景観や環境の保全管理活動を続けてきた葦の会が、メンバーの高齢化や後継者不足などによって活動に限界が見え始めたことから、外部からの支援を導入するなどして、組織力を強化することも大きな課題としてあげられる。また、行政が人材育成や経済的援助も含めてそれらを如何に指導し、協力体制を築いていくか、についても検討する必要がある。

こうした計画を長期的・安定的に進めていくには、景観や環境の保全活動や利用活動を地域の産業として根付かせていくことが必要で、地場産品を開発するなど地域資源の活用による地域活性化が求められるのである。

 

5-3 計画のコンセプト

 

これまで述べてきた浮野の里の特性や魅力を尊重した計画とはどのようなものであろうか。この整備計画の主体である地域住民や利用者が求める計画のイメージとして次の3つをあげることができよう。

1] 人と自然、人々の生活と景観など、それぞれのかかわりや環境、歴史などが学べる空間。

2] 誰もが伝統的な農村景観や雰囲気に接しそれを楽しめる空間。

3] 景観や自然の保全管理活動に参加するなど、市民みんなでこうした魅力を支える空間。

これらのテーマを対象区域の空間全体に当てはめて総合化すると「農村の魅力をみんなで支え、それを体感できる田園フィールドミュージアム」というコンセプトを掲げることができよう。

「フィールドミュージアム」という概念は、対象とする空間(フィールド)に存在する自然(生態系を含む)のみならず、その中で展開される人間と自然との様々な結びつき(伝統的な農業生産、自然に根ざした伝統的な生活様式など)に価値を見いだし、その形態(システム)全体を保全管理し、観察や学習、レクリエーションなどの対象に供していこうという考え方である。

したがって、レクリエーション利用や環境管理のための施設整備は必要であるが、それ以上に管理運営のための仕組みづくりや活動プログラムの整備などが重要とされるわけである。

このコンセプトに従うならば、先ずもって地域の魅力源である景観や自然が将来の長きにわたって保全されなければならない。

 

 

 

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