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5 浮野の里整備計画の前提

 

5-1 計画のフレーム

 

前章までに示された資源の特性やこれまでの活動、問題点等を踏まえて、浮野の里整備計画を策定することになるが、それらの全体像としての計画のフレーム(考え方の流れ、提案の項目等)を示すと図5-1のようになる。

すなわち、「計画の目的」および「浮野の里の特性」から「計画のコンセプト」が導かれる。一方、浮野の里が抱える様々な「問題点」から「計画の課題」が明確になり、「計画のコンセプト」を「計画の課題」にもとづき具体化したのが「計画の基本方針」である。さらにそれをハード面からソフト面に至る具体的な計画の内容に従って整理したのが「整備計画」以下5つの項目である。以下、このフレームに従って説明を加える。

 

5-2 計画の課題

 

計画の課題は、問題点を分析することから始まる。これまでの現地調査や住民意識調査によって明らかにされた問題点は大きく4つの分野に整理できる。先ず、「景観や環境保全上の問題」として、湿地(浮野)の貴重植物の管理や湿地の乾燥化に伴う植生管理の問題、田堀の水質悪化、産業廃棄物の投棄や建設残土等による水田の埋め立て、さらには耕地の管理の滞りによる休耕地の増加やその結果としての農村景観の荒廃など、数多くの問題点が指摘できる。「施設整備上の問題」としては、例えば利用拠点施設がないことや、案内設備の不備などがあり、「地域運営上の問題」としては「葦の会」の組織運営上の問題や今後の新たな活動展開方向が見えないこと、行政や一般市民の支援が不十分なことなどがあげられる。また「社会的経済的問題」は他の全ての問題にも直接間接に関わることであるが、特に農業が衰退していく中でそれに代わる新しい産業が芽生えていないことなどが明らかにされている。

このように考えてくると、浮野の里の魅力源である農村景観の保全・管理方策を充実させることが第一の課題としてあげることができる。景観を損ねている要因を除去すること、すなわちゴミの投棄防止など環境保全対策を強化すると同時に、農業活動など人々の自然への働きかけの結果維持されている景観や二次自然(ヨシ原など)を守るための、農家や地域住民対象のハード・ソフト両面の支援対策が必要となる。

また、浮野(湿地)を中心とした自然環境の価値については、特異な湿地の環境や貴重な植物の存在が報告された。同時にそれらが盗掘などによって失われたり、環境が荒らされている実態も明らかになった。

 

 

 

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