日本財団 図書館


しかも、これらを維持するには継続的な自然への働きかけ、あるいは管理活動が必要である。しかし、社会的・経済的な支えなくしてそれらを実施していくことは容易なことではない。

そうした中で最近注目されてきたのが、「市民ボランティアによる自然や景観の支援活動」である。行政や地域団体の指導や支援協力を得ながらも市民有志が中心となって自主的に活動に参加するという方法であり、特に自然公園や自然風景地においては各地でこうした活動が始まりつつある。

こうした動きが生まれる背景として、この方式には定まった方法はなくそれぞれの場面に応じて工夫しながら対処していかなければならないという試行錯誤的な側面や対象空間へのきめ細かな対応、運営面で企画力や人のネットワークが求められるという課題があり、そうした状況に対する行政対応の限界もあげられる。しかし、何よりも大きな要因としてあげられるのは、人々の大きな意識の変化である。昨今の自然志向、環境志向の高まりによって、自然に対する知識や環境管理活動への参加意欲を備えた市民(住民)が急激に増えつつあるという実態がある。彼らは、行政担当者よりも豊富な情報や知識、人のネットワーク、それに旺盛な活動意欲を持ち合わせている。

これは、見方を変えれば、「優れた自然や自然景観は自分たちの力で守りたい」という市民自身による環境管理方式の一つの形態であるということもできよう。

また、余暇活動やレクリエーション活動の変遷からみると、市民(住民)参加による緑の管理運営活動は、従来のものとは違った意味を有している。すなわち、この参加者自身にとってこの活動は、無償の活動でありながらレクリエーションとしての側面も含んでいるわけで、レクリエーション活動とボランティア活動が一緒になった新しい余暇活動の形態といえるのである。

また、人によってはこの活動に参加し環境に対する知識や技術を身に付けていくことが一つの学習活動にもなり、それを通して地域への理解や愛着が深まり、地域へ貢献しているという意識も加わって「生き甲斐としての活動」にまで高めることもできる。これはまさに「生涯学習の時代」にふさわしい活動ということもできよう。欧米諸国においては、「グランドワーク運動」や各種の「環境保全ボランティア活動」にみられるように、こうした活動は我が国よりはるかに一般化している。従来の流れからすると近い将来、我が国においてもこうした活動がさらに普及してゆくものと考えられる。

いずれにしても、この計画においては、市民支援の仕組みを如何に構築できるか、また行政がそれを如何に指導し支援していけるかが成否の鍵を握っているといえよう。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION