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さて、ユニバーサルサービスとか、ユニバーサルデザインですが、ユニバーサルとは「万人共通の普遍」、つまり万人共通の使いやすいデザインです。ここで提供されるサービスの核になるのはホスピタリティです。要するに心の問題です。観光資源についていえば、商品価値を形成するものは、ハードとソフト、もう1つの軸がまさに「ハート」となるのです。この場合、単純に高齢化した人たちに対応するための対策技術ではなく、より広い概念でユニバーサルという考え方を持つべきです。社会とか地球環境というような視点で裏打ちされた付加価値でなければなりません。

時代の変革期、人々の関心は心に向かうのです。その中でサービス産業のあり方が、いまわれわれに投げかけられています。そのためにはユニバーサルマネジメントシステムができていなければなりません。同時にホスピタリティの理念も確立されているべきでしょう。当然のことながら顧客第一主義という立場から、サービスのQC、CSというものが実践に組み込まれていなければなりません。バリアフリーの概念、エコに対するものも入っていなければいけません。

実はこれらを動かすのは人です。私は冒頭でサービスを突き詰めていくと、「最終特性は精神的な満足感」と言いました。そして、構成要件はユニバーサルサービスではハードとソフトとハートと申し上げました。それぞれのところが提供しているサービス、商品、付加価値を明確にとらえられれば、管理は可能です。人対人、ハートにかかわる部分は管理できないという考えはこの際捨てていただいて、挑戦をしていただければと思っております。

 

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「もてなしの品質」について講演する作古教授

 

問題提起・意見交換

 

【立山】「ユニバーサルサービスを考える」という大きなテーマをいただきました。最初は問題提起から入らせていただきます。

【堀尾】まずお客様のニーズが多様化していますが、サービス提供者から見ると、お客さんを管理しづらくなりました。具体例は食事の案内です。1泊2食付き料金の違いの内容とか時間、不必要な料理や食材の提供についても、最近はっきりと希望を言い残す方が多い。また、宿泊分離を選択されたお客様は、情報を予め仕入れてお越しになっています。旅行者の傾向は人数の小口化、宿泊グループの個別化、低額商品を希望しつつ、その内容の事前吟味は非常に厳しい。さらに全体の予算を切り詰める手段を考えています。一方、お客さんに物をサービスすると大変喜ばれます。最後に地域住民は観光地としての認識が薄いのが実態ですが、逆に観光客の方では比較的好印象でかえって新鮮な感じを与えているようです。

【野田】熊本を旅行して感じたことは、応対が親切で愛想がよく、観光地の案内もして下さいました。この印象は大変大事で、また行ってみたいという気持になります。自家用車を利用すると、看板とか案内板が多ければと思います。宿泊して感じたことは人情溢れる接客を受け、シンプルな対応は落ち着いた感じを受けます。方言や素朴さも親近感とくつろぎを与えます。また、家族旅行で子供の浴衣、お布団、お子様ランチなどきめ細やかなサービスはとても利用しやすい。さらに土地の郷土料理や物産品を味わえるのは嬉しかった。残念なことは、男性用のお風呂が大きく、女性用のお風呂が小さかった。わがままをいいますと、観光名所とか人工アミューズメントパークなどが連動しているといいなと思いました。

【立山】引き続き意見交換ということで、ユニバーサルサービスについて、ご意見を伺えればと思います。

【須田】私どもが旅に出る場合、心に安らぎを求めて旅行します。その時のもてなしの心によって、旅の印象は違ってきます。わざとらしいことをやる必要はありません。むしろ旅人を気遣い、気を使わないことがありがたいのです。言葉は方言でも拙くてもほのぼのと相手に伝わるのがもてなしの心だと思います。もう1つは観光客になるべくたくさんの選択肢を与えることが大事です。例えば食事もバイキング、泊食分離、食を出さないのももてなしかも知れません。

私は高速バスで来ました。球磨川が見えたのは1ヵ所だけでした。昔の肥薩線は風情がありました。そういうことで汽車、列車、あるいは船を移動の手段としてだけでなく、観光の要素として使うことを提案します。

【小泉】香港で体験したのは、若い人が私たちの英語を聞こうと努力していたのに対し、年寄りは過去を覚えている人もいるのか、言葉にこだわっていました。私は許す心、許してあげる心がもてなしにつながると思いました。また、レストランでは、お客様と一緒に食を楽しむ気持が見えました。しかし、免税売店、高級料理店、高級ブランドの店は、おもしろくなかったですね。

 

 

 

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