日本財団 図書館


005-1.jpg

南九州の観光イメージについて語る伊東、青山の両氏

 

【青山】観光地でない小さな町や村が魅力を高めていくには、隣り合わせた地域の魅力を重ねていけば、イメージアップになるのではないでしょうか。だから、「何でもありますよ」というのではなく、逆に「どこどこの温泉はこの時期がいいですよ」という売出し方が、旅人にとっては選びやすいのではないかと思います。

【石田尾】情報発信型である観光の展望はいかがですか。

【伊東】テクノロジーの進歩で、人間が癒されることについて、科学的な分析が行われ、本物の自然でないと癒されなくなっています。ハイテクが追求するものは自然です。鹿児島は「海洋」と「宇宙」をテーマに拠点をつくり、IT革命以後の観光のあり方を模索していいと思います。

【石田尾】イメージの発信では、これからは訪れる人とそこで営む人をどうリンクさせるかが求められます。

【青山】私たちが旅先で求めるのは素朴な人間的な触れ合い、おもてなしだと思うのですが、誰も知らない場所とか隠れ家、自分だけの穴場も求めているんです。そこをクローズアップさせるのも手です。その時に期待を裏切らないまちづくりに取り組んで欲しい。

【石田尾】南九州全体で何がやれるのか。今後の目指す方向をご指摘をいただけますか。

【伊東】例えば、海洋大学あるいは海洋考古学を大学の中につくる。土地の自然景観を利用し未来へのドライブをかけていく。地域は活性化され、産業の振興にもつながります。私は屋久島でバーチャルリアリティ学会というのをやっています。理由は絶対的な自然を見ないとサイバーワールドの自然が描けないからです。屋久島を、地域全体のアイデンティティとして発信していけば、地域のイメージは変わっていくと思います。

【青山】新しく付け加えるものは、例えば、開聞岳に咲く菜の花の風景、そういう景観とか雰囲気を損なわないまちづくりをつくっていただきたいと思います。

【石田尾】最後に南九州にエールをお願いします。

【青山】南九州のもつそれぞれの個性、魅力をいかにつなぎ合わせるか。三県の連携がうまくいけば、きっと力強く将来に続く観光地になると期待しております。

【伊東】三県が一緒になってネットワークのあり方、文化観光について徹底的に討議していただきたい。統一的なテーマも考え、従来と全く違った観光を発信していただきたい。

【石田尾】長時間ありがとうございました。

 

討議・意見交換

 

【石田尾】まず、観光客のニーズの変化と、今後観光客に求められるものという視点でお話をお願いします。

【石月】いま旅に安らぎを求めるのが1つの傾向です。また、見る観光より体験するとか、歴史・事実の探究あるいはテーマ性を追求する。そういう形に変わってきています。九州はレベルが高く、さきほどおっしゃったことは全部実行に移しています。問題は発信力の弱さです。

【下竹原】最近多くなったのは親子2代、2世帯の家族旅行、もう1つは友人との旅行です。また、5〜6年前から還暦・喜寿の旅行が地域で増えております。今後観光に求めるものは本物指向、こだわりの旅だと思います。

【玉城】先ほどお話がありました文化デザイン会議を20年来黒子としてやっております。一昨年の鹿児島、去年の京都会議を見ましたが、多くの人がボランティアとして関わっています。

【松田】観光が変わり、バス事業にも影響しております。去年から貸切バスが自由化され、来年2月からは定期路線バスも自由化されます。これからは小型のバスに変わり、乗りきれない5人、10人の観光客には観光路線バスをつくっていかなくてはいけないと思います。

今度のWACの大きな目的は、県と県との境目を取り外すことだと思います。いま九州観光開発会議とか九州観光誘致促進協議会、さらには九州知事会でも協力し、だんだん県の境目が取り払われつつあるようです。

【南】最近は気の合ったグループ、家族、シルバーの方々が動いておられる。その方々は都市では味わえない時間の流れを体感することだと思います。いま自治体は観光産業を柱にたてていますが、観光事業者も住民も参画するような形で育てていくのが流れと思っております。

【村木】私は旅客船の仕事に携わっており、船の中でゆっくりくつろいでもらうことを考えております。それと観光は他人の故郷へ行くわけですが、「あなたの故郷でない、私の故郷ですよ」という訴えかけをやっていくべきではないのかと思っております。

【古木】先週、豪州ビクトリアを視察、日本との違いを幾つか見つけました。日本は看板が多く、町が雑然としています。それから韓国は大統領が自らテレビに出演し、宣伝したために日本より外客が多いです。また、文部省が夏休みや春休み以外に観光で休みをとった場合、出席扱いをする方向性が出ています。鹿児島でも発信をすれば、各地から集まってくるのではないでしょうか。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION