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地方リポート

 

戦略的な観光客の誘致を目指して

 

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熊本県商工観光労働部長

前田浩文

 

◇熊本県の観光

九州のほぼ中央に位置する熊本県は、「阿蘇くじゅう国立公園」、「雲仙天草国立公園」という2つの国立公園をはじめ、菊池渓谷や人吉球磨地域など、県内いたるところに素晴らしい自然や、歴史的・文化的史跡を有しております。その他、全国的にはそれほど知られておりませんが、石の芸術品ともいうべき見事な石橋が点在する緑川流域、平家落人が隠れ住んだという秘境の五木・五家荘地域など、見どころは実に豊富です。

ところで、かの有名なハーマーン・カーン博士は、観光産業が21世紀の重要な基幹産業の1つになるであろうと予言しております。ハイテク産業や情報産業など、現代の世界産業をリードしてきた米国は、また同時に、冠たる観光大国でもあります。クリントン大統領自らが95年に「ホワイトハウス観光会議」を招集し、21世紀の観光産業を重要視する政策を打ち出したのは有名であります。99年のデータによれば、米国での観光支出額は、5,411億ドルであり、雇用面でも直接雇用が780万人、更に、税収が867億ドル(約10兆円)にも達しているといいます。わが国においても、運輸省(現在国土交通省)の推計(94年)によれば、観光産業の総売上高は約20兆円、観光に携わる従業者数は約190万人になるといいます。熊本県の場合、99年の観光統計から推計すると、観光の直接消費額は、約3,200億円、関連誘発係数を、その2.0倍前後と考えると、約6,000億円という推計値が得られます。熊本県産業の総生産額が5兆8,960億円(97年)であることからすると、いかに観光産業のウェイトが大なるものかが窺えます。観光は単にわれわれの生活にゆとりや潤いをもたらすのみならず、地域経済の活性化にも多大な貢献をしているのです。

このような観点から、本県でも、観光産業は地域の重要産業のひとつであるとの認識で、観光キャンペーン等を実施し、観光客の誘客を図っております。その結果、入り込み客は年々増加し、89年の35,322千人から98年には53,629千人と10年間で約1.5倍に伸びてきています。

今後とも、観光関連団体などと連携して、観光客が気持ち良く本県を訪れ、旅することができるよう「おもてなしの心」の啓発、向上を図るほか、昨今の「癒し」「学び」「体験」といった観光客のニーズに対応した観光素材の開発にも取り組むとともに、イベント、コンベンションの誘致を図るなど戦略的な観光客の誘致を進めてまいりたいと考えております。

 

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阿蘇草千里からの中岳

 

 

 

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