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南九州全体の観光イメージ確立へ

多様化する需要に的確な対応を

 

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(株)日本旅行代表取締役社長

荘司晄夫

 

■まず、WACの役割からお話をお伺いいたします

荘司 2000年10月に経団連が「21世紀のわが国観光のあり方に関する提言」を、また、昨年末に観光政策審議会が「21世紀初頭における観光振興方策」を答申しましたように、21世紀は観光産業が国づくり・まちづくりの重要な柱になってくると思います。そうすべきだという認識が国民の間にだんだんと定着してきました。これはいろいろな分野の関係者の努力によって実を結びつつあるのですが、TAPからWACへと、運輸省(現在国土交通省)が中心となって日本観光協会と協力しながら広域的、かつ具体的な観光問題について話し合ってきた、この会合の果たした役割も大変大きいと思います。WACは東北、北陸と二回開催されましたが、その後、北東北三県観光立県推進協議会による「乗ってコ 飛んでコ北東北」キャンペーン、北陸三県と日本旅行業協会が初めて連携した「味わう・遊ぶ・そして憩う。色彩コレクション北陸」キャンペーンは、具体的な形で実現しました。

 

■こうした中で旅行業はどういう役割を果たしますか

荘司 観光は日常の生活圏を離れて人と人とが交流を深めるとともに、歴史や文化、自然と接する中でいろいろなことを学び体験します。人々はこれによって生きがいや安らぎを生み、生活にゆとりとうるおいを与えます。今、人々の旅行ニーズは多様化・個性化しております。お客様のニーズに合致できるようコーディネイトする、いわばプロデュース機能を充実できればと思っています。

 

■今後の最大課題である外客誘致はいかがですか

荘司 2000年の海外からの訪日客数は前年比106%、約470万人と予想されています。一方、海外渡航者数を見ると1,740万人が見込まれ、その乖離はまだまだ大きいものがあります。この乖離を埋める大きな市場は東南アジアです。この地域のお客様のニーズを的確に把握し、誘客推進することが求められます。そのためには旅行会社を含めた広域連携によるプロモーションが望まれます。

また、2000年9月に中国人の訪日観光ビザが解禁されましたが、ただ北京・上海・広東省の3地域だけが対象ですので、旅行者数の拡大は緩やかなものと思われます。これらの方々には安全で快適な旅を提供し、日本の休日を十二分に楽しんでいただき日本ファンになっていただくことが重要です。

 

■南九州の観光戦略は何か新しい方策があるでしょうか

荘司 三県いずれも伝統的な観光地を持ち、それなりの実績もあるわけですが、地域としての印象づけはまだ不十分なところがあります。それぞれ三県の特色を生かしながら、統一したシンボルづくりなどを工夫してみたらどうでしようか。

今後、確実に増大していく旅行客は個人・グループ客であり、女性または夫婦の熟年層、そして二世代、三世代のファミリー層が中心になると思います。こうした旅行客のニーズは単なる従来型の観光から、自然の中に癒しを求める旅、トレッキングや歩く旅、ダイビングの旅。それから文化や産業、芸能などに触れつつ人々と交流する旅など、目的が明確な旅行が増えており、多様化する需要に的確に対応する必要があります。さらにいえば、ロマンを感じられる観光者用の定期路線バスや循環バスなど、基幹交通網の整備とともに、いわばエリアの2次交通の面的整備も検討されてよいと思います。

 

■今度の南九州WAC21への期待と注文は…

荘司 今回のWACを契機として、さらに関係者の感性と情熱を結集し、南九州全体の観光イメージを確立するために活動されることを期待します。そして、会議の成果をできるだけ早く具体化されるとともに、継続性をもって各地域が特色を発揮しつつも出来るだけ広域的な連携をもって具体的誘客活動を効果あらしめるようにしていただきたいと思います。

 

 

 

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