司会/旅に行きますと、その土地や様々な人々と出会ったり、今、榎木さんからもお話ありましたけれども、そういった、忘れられない出会いというのは、星野さん、おありですか?
星野/それは、すごくたくさんありますよ。
雲南省のナシ族のおじいさんとかね、シベリアで一緒にキャンプしたおばさんとか、言葉が全く通じなくて、私は日本語、彼女はロシア語で、英語わかんないんですね。だけど、ずっと毎日一緒にいて、毎日ご飯一緒に作って食べてるから、言葉なんかいらなくて、私は日本語しゃべって、向こうがロシア語しゃべってても、ちゃんと会話が通じるんですよ。
全然、不都合の事はなかったの。だから、すごく上手くいってて、でも、別れ際に、私は、このおばさんが、どういう人生を歩んできて、どんな生活をしてきた人なのか、全くわかんないんですね。「ああ、もっと知りたかった」って。本当に、どんな人だったんだろう、知りたいって向こうもそう思って、二人で、肩叩き合いながら、もう一生会えないけど、良かったよね、みたいな感じは伝わるんですけど、何か、そういう、全く、言葉じゃないコミュニケーションの友達ができるというのが、素晴らしいですよね。
司会/旅って、そういう不思議な魅力もありますよね。
榎木さんは、そういった忘れられない出会い、人との出会いというのは、おありですか?
榎木/僕もしょっちゅうなんですけども、一言で旅は人だと、僕は思いますね。これは、国内、海外を問わずね、確かに、色んな良い風景にも出会いたいですけども、ただ、もう1つの大きい楽しみは、旅先で、どういう人に出会うかですよ。どういう人と一緒に、旅ができるかですよ。
ですから、日本国内でも、僕は、もう1ぺん行きたいなと思うのは、やっぱり、そこに、いる人の顔を思い浮かべるんですね。あそこに行けば、あの人に会えるっていうか、どんなにきれいなリゾート地でも、僕にとったら、やっぱり、飽きちゃうと言うかね。そこに、大した観光地じゃなくても、とっても魅力的に自分と気が合う一人の人物がいれば、またそこに行きたくなる。そういう場所は、僕は、日本では、何個所かありますね。
一番多く行ってるのは、例えば、大分県の湯布院。ここは近年、温泉地で、非常に、急激に、年間で400万人くらい観光客が訪れるようになったんですけれども、ただ不思議と、観光地ずれしてない所で、そこで、何人か知り合いがだんだんできていくにつけ、やはり、そうですよ、あの人に会いたいなと思えば、また、ついつい行ってしまう場所は、一つは、湯布院なんか、特にそうですね。
司会/星野さんは、日本国内でおありですか?
星野/私は、やっぱり、人と自然と両方ですけど、秋田。白神山地がありますよね。だから、あそこの山の裾野で暮らしている農家の方たち、本当に、サルが下りてきても、サルと一緒に生きてるようなもんよなんてね。畑仕事して、冬は雪に閉ざされるでしょ。私は、新潟で、やっぱり、雪深い所で育ってますから、やっぱり、ああいう、東北が、空気とか、ブナの林の匂いとか、人間も、何か、すごくホッとするんですよ。
東北といっても、開発されてるし、都会化されて、東京と同じように、どんどんなっちゃってる所あるんですよね、駅でも、道路でも。でも、そこの、白神山地の裾野まで行くと、ああ、私の、生まれた土壌というかね、それと同じ物がここにあって、今も、失われてなくて、そこで生きてる、土と一緒に生きてる人たちがいると思うと、嬉しくなっちゃうんですよね。
司会/すごく素敵ですね。
星野さんがお書きになった、写真とともに綴られております、この「旅の写心館」の中には、ざわめき、ふたり、働く、待つ、去る、そして匂い。今、おっしゃいましたけれども、この6つのエッセイとともに、旅先でお撮りになった70点余りの写真が綴られてるわけなんですけれどもね。
そうですね、人との出会い、それが、まず一番じゃないかと、今、お二人からありましたけれども、旅といえば、欠かせない物の中に、星野さん…、私の場合、いいですか?旅といえば、私は、枕を持っていくタイプなんですね。