Q177 水屋(みずや)とは?
A177 低平地で洪水氾濫に備えて盛土の上に建てたり、高床式にした家屋・倉庫などのことです。近代河川改修が進み、近年建てられる家屋ではこのような対策はほとんど行われていませんが、濃尾平野、関東平野、越後平野などかつて常習的な氾濫低平地には今でも水屋が数多く残されています。京都の桂川沿いにある桂離宮にも高床式の書院があります。その美しさは世界的に絶賛されていますが、書院は水屋そのものであり、桂川は何度も氾濫していますが、書院が床上浸水になったことはありません。現代でも、氾濫しやすいところでは、水屋方式は重要な水害対策であると言えます。
Q178 水制(すいせい)とは?
A178 川岸や堤防から川の中心に向けて突出させた工作物のことです。その目的は、洪水時に流水が堤防などに衝突しないように川の中心の方に追いやり、水制の周囲に土砂を沈殿させて、洗掘・破堤を起こさせないことや、普段、舟運や用水の取水を容易にするように水路を安定化することにあります。
水制は、古くは水制(みずはね)などと呼ばれ、地域ごとに多種多様な形態がありました。河床材料が砂や粘土で杭を打てるところでは、杭を何本も打ちこんだ杭出し水制が造られますが、杭が打てない石礫のところでは木材を組んだ牛枠類というものが造られてきました。牛枠類は置いただけでは流されますので、重しが載せられます。その重しには、蛇籠と呼ばれる、竹で編んだ籠の中に石を詰めたものが使われてきました。今では、この木材が鉄筋コンクリートになったり、竹が鉄線になっています。また、牛枠類の代わりに多様な形状や大きさのコンクリートブロックも使われています。
Q179 朶(そだ)と粗朶沈床(そだちんしょう)とは?
A179 樹の細い樹木や枝を束ねたもので、これを格子状の枠に組み、中に石を入れたものを粗朶沈床といい、河床や堤防の先に沈め、それらが流水によって洗掘されるのを防ぐものです。粗朶を使った工法は、明治時代にオランダ人お雇い技師によって体系化されましたが、江戸時代にも存在していた伝統的工法です。
この工法の特長は、粗朶組みに柔軟性があり、河床の変化に馴染みやすいことです(コンクリート製の場合、土の吸出しや洗掘があると、折れて破壊することがあります)。また、粗朶や石の素材間に隙間が多く、生物の生息空間としても優れています。さらに、粗朶の採取は森林の維持管理にも役立ち、循環型の技術として優れているといえます。
なお、最近では、陸上で大規模な粗朶沈床を組み、それをハイテクのクレーンで川に入れ、石を投入するといった方法が採られており、江戸時代の人力だけに頼った方法でないことが注目されます。