この目的は、扇状地の河川は急流でよく堤防が切れたわけですが、その溢れた水を二重になった堤防でおさえ、その不連続部分からすみやかにもう一度河道に戻してやることにありました。この堤防形態は、戦国時代の武田信玄が「雁行する堤防を造った」と伝えられており、古くから存在していました。ただ、霞堤と呼ばれるようになったのは、明治時代中期以降のことです。
Q174 洪水と水害とは?
A174 洪水と水害は、普通、混同して使われることが多いのですが、厳密には言えば異なります。洪水は、豪雨が降って川に普段の何十倍から何百倍もの水量が流れる現象です。それが川から溢れるか、溢れないかは別問題です。だから洪水が発生しても、溢れなければ水害は発生しません。逆に、洪水が溢れでたとしても、そこに人が住んでいなければ水害になりません。また、人が住んでいたとしても、溢れた水をじょうずに受けとめれば、被害を軽減することができます。だから、洪水はどちらかといえば自然現象を表現する言葉であり、水害は人とかかわることですから自然プラス社会現象を表す言葉といえます。
Q175 水害防備林とは?
A175 伝統的な河川工法の一つで、川沿いに作られた樹林帯のことです。この水害防備林があると、洪水が川から溢れた場合に、流速を押さえ洗掘を防ぎ、土砂をその林の中で落として、被害が大きく軽減されます。特に、堤防は土で出来ているため、洪水が越流すると流速が速く堤防が洗掘されて破堤しやすいのですが、堤防沿いに水害防備林がある場合、堤防を越流した水は流速が押さえられ、日本の川の洪水継続時間ぐらいでは、破堤に至ることはありません。破堤させしなければ、堤防を乗越え溢れる水量は限定され、水害はかなり軽減されます。その樹種には竹、欅、楠、松などが用いられていますが、竹単独やその他と竹の混交林がよく見かけられます。
近代河川改修工事では、この水害防備林が伐採され、現在残されているものは全国でその面積は1,000ha未満と少なくなっていますが、1997年の河川法の改正では河川施設を規定する第3条に樹林帯が位置付けられましたので、今後は復活して行くものと考えられます。
Q176 スーパー堤防(高規格堤防)とは?
A176 堤防の幅を大きく広げ、たとえ洪水が堤防を越流したとしても破堤することなく、被害を最小限に抑えるとともに、幅広い堤防上を都市開発などさまざまな土地利用を行うことを目的にしている大規模な堤防のことです。これは建設省が1987年に超過洪水対策の一環として大都市の大河川を対象に提案したものです。このスーパー堤防は大変いいアイデアであると思いますが、大量の土砂が必要であり、都市の再開発に時間がかかるため、10年経っても全国で10km弱しか造られておらず、普及が難しいところが欠点といえます。