Q170 流域・分水界とは?
A170 ある川にでてくる流水の供給源である降水(雨や雪など)の降る範囲を流域といいます。流域と流域の境界が分水界であり、山の尾根などがそれにあたります(分水嶺)。しかし、平野部では分水界が明確でない場合もあり、川の流域面積を厳密に決めることが難しいこともあります。かつて、物流が舟運に依存していた時代では、流域の大きさが経済圏の大きさを表しており、大河川の河口港は大変賑わっておりました。現在では、流域面積は洪水や普段利用できる流水の量の大小を間接的に表現するものであり、川の大きさを表す指標といえます。
Q171 右岸・左岸とは?
A171 河川工学関係の本では自明のことなのか、この定義はあまり書かれていませんが、河川工学の原典として著名な「治水工学」(宮本武之輔著、修教社書院、1936年発行)では、「流水に従って上流から下流に向かった場合に右側の河岸を右岸、左側の河岸を左岸と言う」と書かれています。この左右岸の約束は、今では世界中どこに行っても同じです。
しかし、戦前の日本陸軍では上流を向いて左右岸をきめていましたし、鮭や鱒が重要な食料源になっていたところでは上流を向いて左右岸を表現していたようです。言葉は本来、生活に根ざしたものですが、世界の共通理解を図るために変更しなければならないこともあるということです。
Q172 堤内・堤外(ていない・ていがい)とは?
A172 ちょっと考えてみると堤防の川側か場内のように思えますが、実は、堤防で守られている住居や耕地のある方が堤内であり、水の流れる川側の方が場外です。
これは、堤防が造られた由来を想像すると理解できます。おそらく低平地を開発する時は、まず集落を洪水から守るために集落を囲むように堤防を築いたことでしょう。これが、今でも囲堤とか輪中堤とか呼ばれて残っています。その輪中堤などがいくつもつながって、いつしか川沿いの連続した堤防に発達したというわけです。だから、守られている住居のある方が堤内というわけです。英語には、こうした堤外・堤内という便利な表現はないようです。
Q173 霞堤(かすみてい)とは?
A173 霞堤という美しい名前を初めて聞いたとき、どんな堤防なのか心がときめきました。霞堤というのは、地形勾配の急な扇状地に特有なもので、堤防が不連続で雁行状に二重に重なっているという特殊な堤防です。堤防が不連続ですから、洪水時にはその部分から洪水が逆流してきます。しかし、地形勾配が急なので、その逆流にも限度があり、水は堤防の重複した空間に溜まって、溢れ出ることはありません。