深海底には、現在まさに生成されつつある鉱床が2種類あります。第1が海底熱水成鉱床、第2がマンガン酸化物鉱床です。海底熱水成鉱床は海嶺と背弧海盆で、マンガン酸化物鉱床は深海底および海山の山頂あるいは山腹で発見されています。
海嶺と背弧海盆では、マグマ活動に生起されて、海水を起源とする熱水対流系が形成されています。この熱水の一部が海底に噴出して、海水と混合すると、硫化物や硫酸塩が析出して、堆積物が形成されます。これが、海底熱水成鉱床です。海嶺の熱水成鉱床は現在陸域で見られるキースラーガー型鉱床に、背弧海盆の熱水成鉱床は黒鉱型鉱床に対比されます。
深海底表面の堆積物上には、ジャガイモ大の黒色の団塊が存在します。この団塊は鉄・マンガンの水酸化物を主とするため、マンガン団塊と呼ばれています。水深が1,000〜2,500m付近の海山の山頂あるいは山腹が、同様の水酸化物で被覆されていることがあます。この被覆物は、マンガン団塊に較べてコバルトに富むため、富コバルトクラストと呼ばれます。海底熱水成鉱床と違って、過去に生成したこの種の鉱床は未だに発見されていません。
現在生成されつつありながら、過去の鉱床が発見されていないもう1つの鉱床に、メタン水和物(メタンハイドレート)があります。メタンと水分子が化合したメタン水和物は、低温では熱力学的に安定です。海底は沿岸部を除いて水温がほぼ4℃であり、海底下には生物遺骸の分解で発生したメタンが存在するために、メタン水和物層がほぼ海底面に平行に発達しています。これが、メタン水和物鉱床です。当然のことですが、鉱床近の温度条件が地質変化で変わると、メタンはガス化して、逃散してしまいます。このため、地質時代に生成されたメタン水和物鉱床は保存されていません。
上の鉱床は、2つの理由で、未来の資源といわれています。第1の理由は、現在の技術では採掘できないため、新たな技術開発が必要です。第2は、陸上資源の枯渇を補うものとしてへの期待です。ただし、マンガン団塊の場合、調査が進むにつれて、最初に期待したほどの量は存在しないことが判明してきました。他の資源に対しても、楽観的な期待をもつべきではないでしょう。
Q156 資源の上から見て、縁海域はどうして重要なのですか?
A156 今から30数億年前、地球に生物が発生して以来、ほとんどの生物が縁海で生活してきました。そして、多くの鉱床が生物の活動に関係して生成しました。例えば、石油、石炭、石灰岩等の有機的堆積鉱床は、生物体の一部が残存・濃集して鉱床となっています。また、これら以外の多くの鉱床が、生物活動に関係する地球環境の変化に誘引されて、生成しました。
Q157 石油、石炭、天然ガスはどういう理由で化石燃料と呼ばれるのですか?
A157 普通、生物体の化学組成を簡略化して、(C6H12O6)nで表わします。光合成では、6nCO2+6nH2O→(C6H12O6)n+6nO2という反応により、CO2とH2Oから生物体がつくられます。この反応で、左辺から右辺へ移行するとき、太陽光が吸収され、そのエネルギーが生物体の中に蓄えられます。