III 複合関連システム
K 資源としての海
Q150 「資源」という言葉は日常よく使われますが、専門用語としてはどのように定義しているのでしょうか?
A150 確かに、「資源」という語は、「食糧資源」「水資源」「森林資源」「漁業資源」「鉱物資源」「燃料(エネルギー)資源」など、極めて広範囲で使われています。さらに、「人的資源」や「経済資源」などという語もあります。専門用語としての定義は、それぞれの分野で異なりますが、そこの共通する概念として、私は「あるプロセスから有効な出力を得るために、そのプロセスに投入される入力といえる」と定義しています。例えば、食糧資源は、それを自分自身の体内に供給することによって、命の維持という出力を得ています。鉱物や燃料資源は、製造工程に投入されて、生活を快適にする製品が生まれてきます。この生産をより効率よく行うためには、人的資源や経済資源が効率よく工程に投入されなければなりません。ここで重要なことは、資源はそれ自体を得ることが目的とはならず、目的を達成するのに必要は物質等を指します。したがって、資源は代替物があればそれを使えばよいし、またそれを取得するためにはなるべく余分な資源を消費しない方がよいに決まっています。そこで、必要な資源を確保するときは、それが集まっている場所から取得するほど効率がよいわけです。田や畑は、人工的に食糧資源を集めた場所を指します。海洋の物理化学的条件により魚等の集まっている場合、そこを漁場といいます。鉱物や化石燃料資源が集まっている場所は、鉱床と呼ばれます。金属資源の場合、採掘対象とされる元素は地殻存在度(地殻を構成する岩石の平均化学組成)に較べて10〜10,000倍濃集しています。資源、特に天然資源を考える場合、この「濃集している場所」という概念が必要です。ここでもう一歩表現を進めると、「資源物質の濃集している場所を鉱床」というのではなく、「鉱床を形成することができるから、その物質は資源と呼ばれる」というべきでしょう。別の表現を使うと、「資源は偏在しているのではなく、偏在しているから資源」なのです。
Q151 人類は、海からどのような資源を得ていますか?
A151 最も多いのは魚介類に代表される食糧資源です。工業の面から見ますと、多量の海水が冷却用水として利用されています。さらに、海水を蒸発させたり、イオン交換膜を通して、食塩(鉱物名は岩塩)を得ています。また、海水とカルシウムイオンを反応させて、酸化マグネシウムも得ています。