A121 魚が陸へ進出した時期であるデボン紀の終わりには大量絶滅事件がありました。魚の餌となるような生き物も減ってしまい、魚はお互い食うか食われるかの厳しい生存競争の中におかれた可能性があります。生き残るためには、より大きくなるか、「よろい」を身につけるか、あるいは水中から逃げ出すかという3つの選択肢しかなかったと考えられます。この考え方からは、最後の選択肢を選んだ魚が浅瀬を動き回る能力を身につけ、やがて上陸したと言えます。水中から陸上への移行は、一見するととんでもなく大きな壁のように見えます。しかし、魚類はデボン紀の酸欠状態、乾燥、天敵といった過酷な条件を克服して生き延びるための適応をしていたようです。これらは、いずれも魚が魚として生き残るための適応でしたが、一度これらの能力を身につけてしまえば、それはそのまま陸上での生活に利用できることは明らかなことです。つまり脊椎動物は、上陸の前に、陸上で暮らす能力を、知らず知らずに身につけていたことになります。
Q122 上陸のメリットは何ですか?
A122 デボン紀の水中が、生物資源をめぐる熾烈な争いの場だったのとは対照的に陸上は、まさに新しい食物資源の巨大な新天地であったに違いありません。上陸さえしてしまえば、この資源を利用することが可能になるのです。実際現在の陸上の生物の総重量は、海の生物の190倍近くあります。もちろん脊椎動物が上陸した当時は、まだ陸上の植物も、またそれに支えられた昆虫その他の動物も進化途上で、現在ほどの多様性や総重量はなかったでしょうが、それでも最初に上陸した脊椎動物はまさに手つかずの資源を利用することができたのです。
I 海洋動物の多様性とその環境
Q123 サンゴとサンゴ礁はどう違うのですか?
A123 サンゴ礁は海の中でできた岩礁の浅瀬で地形のことですが、サンゴは地形ではく動物です。サンゴ礁には島を取り巻く裾礁、陸から遠く離れて発達する堡礁、環のような形の環礁があります。サンゴには造礁サンゴと非造礁サンゴがいます。サンゴには骨がありますが、ウニや貝類、フジツポ、ホシズナやコケムシの仲間などのいろいろな動物や、サンゴモやサボテングサなどの海藻類も石灰質を骨や殻を作ります。そのような生物たちが死んだ後に残される石灰質の骨や殻が固まり、長年かけて積もりつもって岩ができます。このようにしてできた海の中の浅瀬がサンゴ礁です。サンゴ礁は生物の骨や殻が作られる限りどんどんできて成長していきます。地殻変動や海面の低下でサンゴ礁が海から離れたものが隆起サンゴ礁です。サンゴだけがサンゴ礁を作るわけではありませんが、サンゴ礁を作る材料の石灰質の骨を造礁サンゴがたくさん作るので、サンゴ礁と呼ばれるのです。