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Q115 脊椎動物が上陸するために必要な体のつくりや生活様式の変化はどのように進化したのでしょうか?

A115 陸上では、水がないため、えらは呼吸の役に立ちません。新たに肺を発達させる必要があります。しかし、魚のいくつかのグループでは、たとえば、肺魚のように、すでに肺を進化させていました。肉鰭類の一つです。この仲間の骨格は軟骨でできており鰭も退化してるので歩き回るのに適した体つきではありません。肺は、水中に住む魚にとっても意味のある器官です。現生の肺魚の一部は浅い、泥で濁った、酸素の欠乏した水中に住んでいます。このような環境では、水面上に頭を出して空気から酸素を取り入れることは、エラによる呼吸の補助として有効な役割を果たします。また、乾期に水が干上がるような場所にも住んでおり、肺呼吸をして乾期を過ごします。このように肺をもつことは、魚類の段階でも十分適応的な意味があるため、すでに魚類の段階で肺は進化していました。

 

Q116 陸上で暮らすために、他にも重要な進化があったのでしょうか?

A116 例えば、魚の尿に含まれるアンモニアは、大変有毒なものです。しかし魚は、水の中に住んでいるので、尿を排泄してしまえば、アンモニアはあっという間に薄められてしまうため、中毒の危険はありません。しかし、陸上で暮らす生き物は、アンモニアをより毒性のよわい尿素(両生類やハ虫類)や尿酸(鳥類や啼乳類)に変えて排泄しています。ただし、このような排泄様式の変化がどのように起こったのか詳しいことはわかっていません。

乾燥からの保護も重要な課題ですが、初期の両生類の中は、魚類型の先祖の体表を覆っていた鱗を持ち続けているものがあり、これによって乾燥を防いでいたと考えられています。ただし、初期の両生類も、現在の両生類と同様水中で卵を産んで繁殖していたと考えられ、その意味では完全には水から独立しているわけではありませんでした。

 

Q117 両生類の直系の先祖はどのようなものですか?

A117 総鰭類の中にはシーラカンスと扇鰭類が含まれます。シーラカンスは海に生きており鰭の中の骨格は退化しています。デボン紀中期以降白亜紀まで化石で見つかりますがその後は化石が見つからないので絶滅したと思われていましたが、1930年代の末に南アフリカの沿岸で生きたシーラカンスが見つかり生きた化石として一躍有名になりました。扇鰭類は、デボン紀から古生代の終わりに主に淡水に住む魚でした。そのなかにユーステノプテロンという魚がデボン紀後期に現れました。この魚は体長は60センチ程度の大きさで背骨をもち、また鰭の中には、鰭の根元に一番近いところに一本の骨が、それに続いて2本の骨が、さらにその先にはたくさんの骨が鰭の先端へ向かって放射状にならんでいます。まさに我々を含む陸上の脊椎動物の腕や足の骨格の配列と同じです。またエナメル質が複雑に入り組んだ構造の歯をもっています。これは原始的な両生類の歯と同じ構造なのです。そこで、扇鰭類が両生類の直系の先祖と考えられています。

 

 

 

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