P 地域社会における海岸利用 ―大都市沿岸部における水環境資源のパートナーシップ型保全用活用調査―
村橋克彦 (横浜市立大学経済研究所教授)
関口昌幸 (横浜市企画局調査課)
1. 研究趣旨
わが国の自然の海岸線は開発によってどんどん少なくなり、海の生物と人々との交わりも全体として変化してきた。特に従来様々な形で、海岸線の世界と付き合っていた地域の人々の意識が薄れてきた。子供たちが海辺との日常的な付き合いをどのように復活させるかという課題は重要である。
社会の成熟化に伴い、東京湾周辺などの大都市沿岸部は、観光・コンベンションから大規模商業立地、漁業、市民レクリエーション、生物生息環境の保全等、その土地(水面)利用のありかたが多目的化かつ高次化し、様々な主体によるニーズと利害が交錯する場所となっている。
この研究では、横浜市金沢区の「平潟湾・金沢湾沿岸部」を事例としてとりあげ、このエリア全体の水環境資源のありかたを生態系や景観の保全、観光レクリエーション、地域経済の活性化などの様々な観点から調査把握すると共に、今後、どのような形で、資源を保全し有効に活用したら良いか、その方策についても提案する。
2. 事例対象地区の概要
横浜市金沢区は、市域の南端に位置し、東は東京湾に面し、南は横須賀市、逗子市、鎌倉市、西は栄区に、北は磯子区に接しており、区域の大部分は、起伏の激しい丘陵地帯で概ね100m前後の山が入り組んだ地形になっている。内陸部には、横浜市最大の緑地帯(円海山緑地)を抱え、臨海部には横浜市でも唯一の自然海岸(野島海岸)を含み、人が安心して水に触れることができる海岸線を抱えている。
金沢八景地区は、平潟湾の入り海が、江戸後期以来、徐々に埋め立てられることによって形成された区の中心市街地である。開発の経緯から、新旧のコミュニティがモザイク状に存在している。
また、中心市街地でありながら、称名寺市民の森や権現山、野島など丘陵部の緑と金沢湾・平潟湾の沿岸の水際線に取り囲まれており、海の公園・八景島などの観光資源も抱えている。
(図1-金沢八景エリアマップ参照)