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カナダのエリオットレイク(Elliot Lake)に代表される礫岩型鉱床は、このうち最も古い時期の生成である。この型の鉱床は砕屑性物質からなり、一種の砂鉱床と考えられる。同種の鉱床としては、南アフリカ、ウィットウォータースランド(Witwatersrand)の含金礫岩がある。この含金礫岩は、世界の金の30%を供給する金鉱床であるとともに、副産物としてウランも供給している。20億年より若いウラン鉱床の鉱石鉱物は水溶液からの沈殿物である。ウランには、可溶性の6価のイオンと、難溶性の4価のイオンがある。地球大気が嫌気性の時代には、岩石が侵食されたとき、そこに含まれていたウラン鉱物は酸化されることなく、砕屑物となって流失し、低地で礫と一緒に堆積した。これが、礫岩型鉱床の成因である。一方、大気の酸素分圧が上昇すると、岩石中のウランは、侵食過程で酸化されて6価のイオンとなり、溶質となる。ウランを含む溶液が、地表あるいは地下で石墨や炭質物などの還元剤に出会うと、ウランは4価に還元されて沈殿する。これが、20億年前より新しい時代のウラン鉱床の成因である。

最も消費量の多い工業鉱物資源として、方解石(CaCO3)を主成分とする石灰岩がある。この石灰岩の大部分は、サンゴや有孔虫など石灰質殻をもつ生物の遺骸である。これらの生物は、海水中に溶存するカルシウムイオン(Ca2+)と炭酸水素イオン(HCO3-)から炭酸カルシウム(CaCO3)を合成している。その化学反応式の過程は、次の通りである。

H2O+CO2 → H++HCO3- (8)

Ca2++HCO3- → H++CaCO3- (9)

熱帯および亜熱帯の海洋に分布する島嶼では、しばしば珊瑚礁が発達している。珊瑚礁の石灰岩と海鳥の糞とが反応すると、炭酸カルシウウムが燐酸カルシウムに変わる。このようにして生成した燐鉱石をグアノという。

中央ヨーロッパ一帯、大雑把には北は北海あるいはバルト海沿岸、西はエッセン、南はマンスフェルト、東はワルシャワの範囲に、含銅頁岩(Kupferschifer)と呼ばれる層状の銅鉱床が存在する。この鉱床は、現在の黒海の海底のような嫌気性の環境で、硫酸還元バクテリアの作用により、鉄の硫化物とともに黄銅鉱(CuFeS2)が沈殿したことにより生成したと考えられている。

アフリカの中央部、コンゴ(旧ザイール)とザンビアの国境地帯は、地層準に規制された銅鉱床が多数分布するため、銅帯(Copperbelt)と呼ばれる。この銅帯に分布する銅鉱床は、副産物としてコバルトを含む特徴をもつ。このため、世界におけるコバルトの供給の安定性はこの地域の政治情勢に大きく依存している。鉱床の母岩は砂岩であるので、含銅砂岩と呼ばれる。

コバルトは伴わないが、同様の含銅砂岩鉱床が、カザフスタンのジェズカズガン(Dzhezkazgan)にも存在する。鉱床に見られる堆積構造が鉱床母岩生成時の海洋における堆積環境を如実に示すとともに、それが鉱石鉱物と密接に関係しいることがGablina(1981)およびNarkelyun and Fatikov(1989)により詳細に述べられているので、海洋環境と鉱床生成の関係という観点から、以下にそれを少し詳しく紹介する。

鉱床は、中部ないし上部古生代の堆積岩中に同成的に形成された層準規制型鉱床が、ヘルシニア期の褶曲作用を受け、富鉱部が背斜軸部に集中したと考えられている。ただし、後成的成因も提唱されている。鉱床母岩の堆積岩類は、ヘルシニア期にジェズカズガンサルィストラフに堆積した。鉱化作用を伴うジェズカズガン層群は赤色砂岩/灰色砂岩互層、シルト岩、礫岩などからなる。特に、鉱床胚胎層準はこのうちの灰色砂岩に限定されている。鉱化作用を伴った鉱床胚胎層準は26層存在する。このうち稼行対象となるのは19層である。

 

 

 

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