したがって、地球を表すために直径15cmの円を描いた場合、楕円としての歪みも地殻表面の凹凸も線の太さの中に入ってしまう。しかし、この限られた幅の中でヒトをはじめとする生物が生息している。また、人類がその活動に必要とする各種の資源もこの限られた範囲で生成してきた。
地球表面で、地殻と気圏が直接する地域を陸あるいは陸域、両者の間に水圏が入る地域を海あるいは海域という。地殻の表面に注目すると、その標高の頻度図は二峰性を示し、頻度の極小が海抜-1500m付近に現れる(図2)。このため、標高の違いによって、地殻の性質が異なることが予想される[注1]。そこで、標高の高い部分を大陸地殻、低い部分を海洋地殻という。このように定義すると、大陸地殻でありながら海水に覆われている部分が現れる。これを大陸棚という(図3)。海洋地殻のほとんどは深海底である。深海底と大陸棚の間には、海溝と大陸斜面があり、この部分が大陸地殻と海洋地殻の境界である。しかし、これ部分は幅が狭く、また資源の存在も知られていないので省略する。深海底の所々に海底火山があり、これを海山という。海山の山頂は海面上に出ている場合と、出ていない場合がある。前者は火山島と呼ばれる。海洋における資源を議論するときは、海洋を大きく水圏の海水と、岩石圏の大陸棚および深海底に分けておく必要がある(表1)。海岸付近の海(沿海)は一般に浅く、生物活動が盛んである。また、所によっては海水と陸水が混合して、汽水環境が形成されている。このようなことを考慮して、沿海域を海域とは分けて定義しておく。火山島の周囲にも沿海域が存在する。ただし、基本的には汽水環境は存在しない。
大陸と海洋の地殻を構成する岩石を比較したとき、化学組成および年令に関して大きな違いが認められる。すなわち、1]前者は、珪酸に富み、鉄・マグネシウムが少なく、全体として花崗岩質であるのに対し、後者は反対の化学的性質をもち、玄武岩質である。また、2]前者の最も古い岩石は約40億年であるのに対し、後者のそれは2億年である。最古の海洋地殻の年令が2億年だからといって、それ以前に海洋地殻が存在しなかったわけではない。各種の証拠は、40億年前、既に大陸と海洋が分かれていたことを示している。海洋地殻は絶えず生まれる一方、時間の経過とともに大陸地殻に付加されるか、その下に沈み込んで消滅している。この結果、現在最も古い海洋地殻の年令が2億年ということである。
現在の地殻表面はいくつかのプレート(岩板)に分けられる(図4)。例えば、ヨーロッパからアジア全体をほぼ覆うユーラシアプレート、太平洋全体を覆う太平洋プレートなどがある。これらのプレートの境界は3種類に分けられる。第1は海嶺(ridge)ないし海膨(rise)で、新しい海洋地殻が生まれている。例えば、中央大西洋海嶺は南北アメリカプレートとユーラシアあるいはアフリカプレートの境界であり、南太平洋海膨は太平洋プレートとナズカプレートの境界である。第2は沈込み帯(subduction zone)で、一般に海溝(trench)や舟状海盆(trough)として認められる。通常、その大陸側には島弧や山脈が存在する。このような地域は、褶曲山脈と火成岩で特徴づけられるため、造山帯という。西南日本は、フィリピン海プレートがユーラシアプレートの下に沈み込む南海海盆の大陸側に存在する島弧であり、アンデス山脈はナズカプレートが南アメリカプレートの下に沈み込むチリ海溝の大陸側にできた山脈である。ヒマラヤ山脈もこのような境界の1例である。しかし、ここでは、インド亜大陸を乗せたオーストラリアプレートがユーラシアプレートに衝突して、間にあったテーティス海がユーラシアプレートに押しつけられてしまっている。第3の境界はトランスフォーム断層である。これは地殻変動にほとんど関係しないので、詳述は省く。