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こういった潜在的な科学的知識が活用されれば、沿岸管理などの人間と自然の接点において、市民がより身近に感じ、参加感や主体性ももてる知識体系ができる可能性がある。

この議論は、沿岸環境保全に関する関連学会の合同シンポジウムでも議論されているが、実際上、市民との研究の連携を行っている沿岸科学の研究者が少ないため、理念的であったり、画餅に思える内容となっている。

具体的事例としては、千葉県房総半島におけるサーファーの海岸環境整備に関する貢献、神奈川県鎌倉市の沿岸生態系情報の収集への市民参加、青森県大畑町での水辺の町づくり、大分県杵築市・中津市における干潟保全の市民活動や東京を中心とするボランティアとの連携などに関わった。これらは、論文や報告書としてのアウトプットは研究者としては成果物と認識するが、一般市民においては、それらの刷り物の重要性はさほど実感されていないようであった。むしろ、主に地域社会で、海岸保全に関する知的な場が出来、関係する人達が自分たちが持っている知識や情報を出し合うことが達成感を持つ要因となるという特徴を持っていた。しかし、将来的には、形として残るものを希求しており、ニュースレター、イベントレポートやWEBでの発信などにそれが現れている。

 

 

 

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