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【あとがき】

日進月歩の科学に、日付による区切りというものはないはずであるが、2000年という西暦の区切りを迎えて、世界中が今世紀のまとめと21世紀への展望を行うことに夢中になっている感さえある。20世紀後半の科学の進歩が、特にコンピュータの発達に支えられて急激に加速したことと、諸分野での多様化が進んだことで、逆に情報の総合化と統一的な理解が必要とされるに至った。水惑星プロジェクトはそのような中で、視点を水に絞りながら、地球科学と生命科学、さらには社会科学をも包含する現在の科学情報の総合化と議論を行ってきたといえよう。

これまで細分化されてきた科学の専門家が集まり、最新の情報をもちよることがいかにエキサイティングなものであるかということは、2000年9月に出版された、雑誌「遺伝」の別冊「地球の進化・生命の進化」という小冊子に見ることができる。地球と生命を総合的に理解しようとする発想は新しいものではないが、これまでそのような発想を展開できるような事実の集積がなされていなかった。今になってはじめてそれが可能になってきたのである。このような情報の総合化の重要な点は、地球と生命という人類の過去と未来を結ぶ概念を広く社会に還元しやすくなるということである。一般社会は科学をどちらかというと総合的に判断しようとする傾向があるし、教育という視点でも総合的な視野が欠かせないからである。

人類が直面する環境、食料、人口、エネルギー問題に対しては、自然科学のみならず、経済学などの人文社会科学を含めた総合科学が、地球全体を対象として取り組まねばならない(Nishida 2000)。さらに、直接このような問題の当事者となる将来の世代に対して、人類と地球双方に最も好ましい解決方法を模索できるような判断力を養う必要がある。教育はこの点において重大な責任がある。

人類と地球、あるいは自然双方にとって好ましい方向を模索することは、現実には人類の自然消費型経済と環境保全との接点を探ることである。しかしながらこれらの問題は、生活当事者である個人個人の、問題に対する深い理解と解決へ向けての行動なしには、解決できない。現在の、特に若年教育の過程において、環境教育の必要性が特に叫ばれるのはそのためである。すべての人類が環境に注意を向け、環境保護がなぜ必要かを自らに問いかけ行動することが理想である。そのためには方法と対象とにかかわらず、個人が地球環境を構成する自然現象にまず興味をもつことが必要である。自然史科学はそのような目的に最も合致する学問分野である。

さまざまな自然現象や多様な生物界は、個人レベルの多様な興味を引きつける効果がある。とはいえ、現実に情報として提供される自然の姿は、例えば生物界でいえば動物や昆虫、地球史でいえば恐竜全盛の中生代など、限られた対象が多い。本研究でとりあげた陸上植物の世界は、水惑星地球の生物生産と人類の未来を支える不可欠の要素でありながら、一般の知識が不足している部分である。本研究を通じて陸上植物界の重要性が多少なりとも社会に認識され、ひいては海洋のみならず地球生命系全体へのより広い興味と深い理解が得られるきっかけとなれば幸いである。

 

 

 

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