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このポリペプチドの中で、現在のタンパク質の触媒活性に比べれば非常に弱いが、しかし弱いながらも多様な機能を持つものが現れた。このポリペプチドは先のポリヌクレオチドと一緒に協力しあい、ポリヌクレオチドやポリペプチド単独では持つことができなかった、新しい機能をもつ原始RNP(リボヌクレオプロテイン)ワールドを構築した。この段階のRNAは、タンパク質の助けを借りて触媒をつくっていたのかもしれない。

無生物的に合成されたタンパク質は活性は低かったが、タンパク質合成系の構築の初期段階では積極的に関与した。しかし、それはRNAの配列に依存した、より活性の高いものに徐々に置き換えられていった。RNAに依存したタンパク質の合成装置がつくりだされて、進化は一層加速され、機能の多様性は増した。さらに、RNAはより安定なDNAをつくりだして中心教義を確立し、現在のDNAワールドを構築した。

 

おわりに

以上、調査研究を行った「地球型生命発現の環境」について要約すると、次のようになる。

 

生命誕生の場

地球は微惑星の衝突、合体によって形成された。原始地球は、表面がドロドロに溶けたマグマの海で、その周りは水蒸気、二酸化炭素、一酸化炭素、窒素を主成分とする濃い原始大気の雲でおおわれていた。衝突する微惑星の数も少なくなるにしたがい地表の温度も低下し、原始大気中の水蒸気は冷え、海を形成した。最初の原始の海は非常に熱かった。大気中の二酸化炭素は中和された原始の海に溶け込み、石灰岩となっていった。

 

生命の素

生命は地球という巨大なフラスコの中で誕生した。生命は簡単な物質から複雑な物質を合成しながら、秩序あるシステムを形成し、生物へ近いものへと化学進化していった。化学進化の過程で、原始大気からアミノ酸や核酸塩基や糖のような生命の素材がつくられた。化学反応を推進するエネルギーは、太陽光、放電、海底熱水孔の熱、火山の熱、宇宙線、放射線、衝撃波などであった。

 

生命は海から

生命は30数億年前、原始の海で誕生した。原始の海に存在していたモリブデン、亜鉛、鉄、銅、マンガン、コバルトのような金属元素は初期の化学進化と生物進化の過程で重要な役割を演じた。原始スープの中に存在していた核酸やアミノ酸は重合をランダムに繰り返しRNAやタンパク質などの高分子をつくっていった。やがて、RNAを情報坦体とした原始生命体のRNAワールドを生み出し、さらにDNAワールドへと進化していった。

 

地球環境の変遷

原始地球には最初酸素は存在しなかった。大気中の酸素はラン藻の繁殖と共に増えていった。地球上に酸素が十分蓄積されるとオゾン層のバリアーができ、生物にとって有害な紫外線を遮蔽することができるようになり、生物は海から陸へと上がった。大気中の二酸化炭素は、生物学的および地球表層、内部を含めた地球化学的循環によりコントロールされ、一定に保たれてきた。

 

 

 

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