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II 生物関連システム

<解説> 濱田隆士

 

「生命の星・地球」にとって水がいかに基本的な存在であるかは、今更強調するまでもない事実である。しかし、生命の発現とか生物の進化、とりわけ水中環境から陸上環境への進出、あるいは生物の系統的絶滅といった地球生命史の大エポックを限るメガイベントについては今尚厚いヴェールに隠されているとして過言でない。地球型生命システムにおける多様性の発現は、常々何らかの形での水環境との関わりの中で起こった筈であり、そのような視点から生命体進化の歴史とメカニズムを扱っていく姿勢が不可欠となってきたのである。その延長線上に、われわれ人類の「生と死」にかかわる生理的な諸現象もまた包含されよう。

いずれにせよ、地球生命と水との世界は、かなり複雑度の高いシステムを形成しているから、ややもすると諸般の説明が一見水と無縁の形でなされるような運びとなることもあり、地球システムトータルの俯瞰的視野から外れてみえる事態を招き易い。これは地球生物が常に重力の影響下におかれている存在でありながら、「重力生物学」のような認識をもって語られる機会が少なく、かえって宇宙空間での特異な事態でようやく注目される傾向とよく似ている。本当の水惑星理解には、こうしたパラドックスを克服することもまた必要であることがわかるであろう。

生物にとっては、生活環境としては水中であるか、大気中を含め陸上であるかが大きな環境差となることは間違いない。その意味において海域と陸域との接点としての渚を代表とする水陸インターフェイスの占める水と生物とのかかわり方の異なる生態学的2大環境が持つ意味を十分に理解されることもまた大切である。加えてヒトという環境撹乱要因が加わりやすい沿岸域は、興味深くまた重要な問題点を多く含む場であることも指摘しておかねばなるまい。

 

 

 

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