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D 海水・大気の大循環―2 ―気水圏における水の循環に伴う諸現象の解明―

綿抜邦彦 (立正大学経済学部教授)

 

1 目的

気水圏においては水は太陽エネルギーにより大循環している。この大循環は地球環境海域、陸域から蒸発散した水はここでエネルギーを吸収し、大気と共に上昇し結露し、雲を作り雨として地表に降下し気温を平均化し、温和なものとする作用をしている。この際にエネルギーを放出する。このとき低緯度から高緯度にエネルギーを配分する働きもしている。さらに海洋における水の流れも熱を運び地球環境の緩衝作用を行っている。同時に水は熱エネルギーのみではなく種々の物質の運搬もしており、さらに浄化作用もしている。

このように水循環に伴う諸現象を環境とも合せて考えると地球上での水の作用が明らかとなり水惑星の意義が明確となる。地球上における水循環とその利用が実にネゲントロピーの利用であること。この自然界における人為と関係なく起る水のサイクルと浄化作用を有効に利用することが、地球上における今後の生命体の存在、存続に重要であり、人類が自然と共生するために、これらをどのように把握していくべきかを多くの人々に理解できるように内容を整理することを目的とする。

 

2 研究計画

1) 降水量分布、量の変化の調査

地球温暖化による降水量の変化の可能性が指摘されており、一部の調査結果が示されている。

既存データを再整理すると共に、わが国および世界各地におけるここ100年オーダーの降水量変化のトレンドを明らかにし、地球上各地の特性と合せて地球の気候変化と対応させる。

 

2) 気水域における水の接点での生命体の現状把握

海水と陸水の混合する気水域は、地球温暖化に伴う海面上昇の接点である。このような地域ではサンゴ礁の発達があり、このような地域に特有のマングローブの植生がある。しかし、サンゴ礁と地球温暖化の相互関係には不明の点も多く、またマングローブの保全の問題は海岸環境の保全整備のために重要である。

サンゴ礁やマングローブの植生のグローバルな現状把握とその保全計画について現地調査を行ない総合的に解析し、これらの地球環境への寄与の重要性を明らかにする。

 

 

 

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