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2. 近地球小惑星エロスの素顔

小惑星エロスのNEARシューメイカー探査機による観察の成果が続々と得られている。クレーターから掘り出された大石が散らばっている写真や、層状地殻の痕跡のようなものも見つかった。NEAR探査機は、一年前のエロスへの最接近の際、その近接映像を得る事が出来たが、その形は33×13×13kmのブーメランのような形のモデルがつくられてた位の精度しかなかった。今年2月には、エロスの回りを周回する軌道に入ることに成功し、より解像度の高い地図と、スペクトル観測による物質分布図が得られた。エロスを造っている物質は、鉄に乏しいコンドライト的な物と推定された。

エロスとのランデブーに関しては、詳しい報告書がサイエンス誌上に公表された。近地球軌道小惑星(NEAR)―シューメーカー宇宙船は2000年2月14日以来近地球軌道小惑星433、つまりエロスの構造や化学組成を画像化している。「サイエンス9月22日号の4つの報告[Yeomansたち(P.2085)、Veverkaたち(P.2088; see the cover)、Zuberたち(P.2097)、およびTrombkaたち(P.2101)]は、各種測定器からの主要な結果をまとめた。エロスは、バルクの密度として2.67g/cm3であり、この値は地球の地殻岩石の値に近い。また、質量の偏りがあまり見られず、比較的均質である。表面は中小の衝突によるクレータが散在しており小クレータの数は予想より少なかった。表面には長い線条の凸地形や溝地形が目立つ(付属資料「惑星エロス」)。これは衝突プロセスに関係しているのであろう。30から100メートルの岩石が表面に不均一に散らばっているが恐らく衝突時に放出されたものであろう。スペクトルからは、エロスが通常のコンドライトの組成に近いことが推測できることから、今まで不明であった地球に豊富に見つかるコンドライトの発生源として、その謎解きに寄与するかもしれない。展望として、Binzelは小惑星と隕石の組成上の関連について議論している。

我々はエロスで発見された不均質な物質分布の事実を説明できる隕石の研究を継続し行っている。鉄隕石中のケイ酸塩鉱物の包有物がどうして分離したかを隕石の研究より解明し、同じような作用で、エロスの物質の不均質分布ができるのではないかと提案している(1999年度「水惑星プロジェクト:地球外物質より探る」研究成果報告書参照)。エロスは近地球小惑星と呼ばれる小惑星の代表的なもので、地球の近くまでやってくる。その反射スペクトルの観察から、地球をつくったコンドライト的物質が少し変化したS型小惑星に属する。この種の小惑星がどんな隕石に対応するかについては、いろいろの意見が出されている。我々は最近、南極隕石の中に幾つか発見された始原的化学組成をもつが、組織は分化した隕石に近いグループに相当すると言う説を提唱している。コンドライト的物質が加熱され高温になり、部分的に溶けて、金属鉄と珪酸塩鉱物が分離したものと考えられている。この研究は今年も継続中である。

 

3. 塩水のもとになるナトリウムやカリウムは何処から来たか

現在まとめている上記の報告に続く論文では、このような塩のもとになるナトリウムやカリウムがどのようにして濃集したかを明らかにしつつある。カドカウンティー、コロメラという鉄隕石の中にナトリウムやカリウムが長石という鉱物として集まった部分を発見した。長石の原子価が一価のナトリウムが二価のカルシュウムより多いため、三価のアルミニュウムより4価のケイ素が多くなり、それを含む岩石は、地球の岩石にあてはめると酸化ケイ素の多い「安山岩」に相当する。安山岩は地球のように水を含むプレートが、島弧の下にもぐり込むことによってできるマグマから出来るとされていた。

 

 

 

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