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この結果は、最も古い年代のKBコメットは、OCコメットのように挙動し、非常に古いKBコメットの核は、放射能によって加熱され、より揮発性の氷を失い、残っているほとんどの氷は、水の氷であるということを示唆している。」

このような太陽系の最前線にある天体は、120以上発見されており(エッジワース・カイパーベルト物体)・海王星より以遠にある直径100km以上の天体は10万個以上あると推定されている。これらが、海王星の重力で撹乱され、木星と海王星の間に分布するセントール小惑星の供給源となっていると考えられている。さらに、これらの天体が、小惑星帯にも注入され、加熱され揮発性成分を失うことで、パラスのような炭素質コンドライト関連の小惑星ができる可能性が指摘された。

 

4.1 コメット・小惑星での水質変成

コメットから小惑星帯への小天体注入が可能だとすると、もしそれに加え物質的変化が起これば、コメット的物質を始原的コンドライト的小惑星物質に変えることができることになる。太陽系初期に、このようなことが頻繁に起こったのであれば、コメット的なものから始原小惑星的な物質へと、種々の中間的物質が形成されることになり、海の水がどちらから来たかを区別する意味があまりなくなる。

今回の会議での発表を総合すると、このようなシナリオが将来つくられる可能性は十分あるように思われた。コメットから始原的小惑星への変化の過程で参考となるコメットの構成物質と活動についても、多くのことがわかってきている。これらの新事実は、最近話題となった百武コメットやヘール・ボップ・コメットの詳しいスペクトル観測によるところが多い。

コメットのチリの構成物質も、エンスタタイトやカンラン石のチリなど、水質変成を起こす以前の物質が検出されている。検出された分子もHCN、CH3OH、CS、CO、H2CO、H2S、OH、HNCなど多種にわたる。このような分子が、コメットの初期の活動により水ができたところに溶解すると、カンラン石や輝石の水質変成を起こすのに十分な酸やアルカリを供給することが期待される。

このような水質変成の過程は、今まで隕石学者の考えていたり、実験で行われたものとかなり違ったものであり、今後の両分野の交流が必要なものと思われた。今までの海の水がコメットによるものか、小惑星からの隕石的物質によるものなのかの判定には、水素同位体のD/H比が用いられてきたが、そのような水質変成の過程でD/H比も変化することが予想されるので、D/H比のみによる判定も強い根拠を失う。今後の発展は小惑星のその場観察や、そこからの試料回収を目指している、今後の探査に大きな期待が寄せられる。

 

4.2 どこにある、どのような天体からきたのか?

太陽系の始原物質と考えられていた炭素質コンドライトにも、水質変成やその脱水したものなど、物質進化したものであることを見てきた。CVコンドライトなどが始原的なものなのか、CIコンドライトの水質変成を受けていないものが始原的なのか、今後の小惑星探査で、本当の始原的物質を小惑星帯に探すことが必要となってきた。

氷にチリを含む小天体は地球上の望遠鏡で探すには、その反射スペクトルを測定する。そのスペクトルをブラウン大学で測定した。オルゲイユ隕石のあった微惑星のように現在でもチリと氷よりできている衛星のあったことが、惑星の探査でもわかって来た。小惑星と始原的隕石のスペクトルを対比するためのデータを、ブラウン大学より入手した。

 

 

 

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