どのような鉱物の中に水が含まれているか、炭素質コンドライトの中の水を含む鉱物にはどのようなものがあるか調べてみなければならない。今まで炭素質コンドライトに知られている水を含む鉱物を調べてみる必要がある。今まで発見されていないものでも発見される可能性のあるものについては、基礎的なデータを集める必要がある。集めたデータの有効活用のため、市販のデータベースプログラムに鉱物データを載せるにはいかにすれば良いかを検討した。
炭素質コンドライトは微細な鉱物の集合体であるため普通の岩石薄片(厚さ30ミクロン)ではその組織はよくわからない。今回の研究で得た超薄薄片の顕微鏡写真で、はじめてその内部の組織の詳細を観察し、炭素質コンドライト的表面を持つ小惑星の一つ、マチルダの表面地形と関連させて、理解することが出来た。炭素質コンドライトに含まれる水を含む鉱物も、マトリックスと呼ばれる細粒の黒っぽい煤のような部分に含まれている。光学顕微鏡で見ても、はっきりした鉱物としては見えない。その例として、オルゲイユ隕石およびイヴナ隕石の岩石薄片の顕微鏡写真を得た(付属資料「フランス・オルゲイユに落下した隕石」)。
内部の組織の特徴は2つある。1つはその組織は細かいチリの静かに集積したものではなく、繰り返し起こった隕石の衝突により、多くの破片になって、それがまた集合したものであることである。この組織は専門用語では角レキ岩化したものであるという。この組織は、NEAR探査機で得られたマチルダ小惑星の表面に残された多くのクレータの跡を見れば、どうして出来たかはよく理解できるものと思われる。
もう一つの組織の特徴は、カキカキと折れ曲がった割れ目が多く走っていることである。これは角レキ岩化する前にも後にも起こっているようである。しかし、隕石衝突の際のショックによりつくられたというより、水たまりの泥が、水が蒸発したときに出来る割れ目に似たものである。これは水質変成や角レキ岩化が起こった後に水が失われた状況を反映しているのかもわからない。
これらの割れ目は多くの場合、方解石などの炭酸塩鉱物で満たされている。このことより、母天体内でこれらの溶液が循環していたということがわかる。この脈の存在が、母天体内での水質変成というアイデアを出すのに、重要な証拠となったものである。
最近サイエンス誌上に発表された論文によると、これまで炭素質コンドライトが星雲からの直接の凝縮物であると考えられてきた証拠であった。マトリックス中の鉄に富む微細なカンラン石の結晶も、粘土鉱物が加熱、脱水して出来たものであると考えられるようになった。
上のような顕微鏡写真からも、どのような鉱物があるのか良くわからない。電子顕微鏡で拡大してみると、はじめてその姿が見えてくる。電子顕微鏡像は原子の周りの電子の雲が見えるくらいに拡大することができるので、それより直接原子の結びつきを見ることができる。このような方法で炭素質コンドライトの主要な水を含む鉱物を見てみると、隕石種により種類が異なっていることがわかってきた。CIといわれる隕石では、蛇紋石と石鹸石の混合したものがある。CVといわれる種類には石鹸石、COといわれる種類には蛇紋石が主に含まれる。CMという種類にはトシリナイトという鉱物が見つかっている。
これらの鉱物は層状ケイ酸塩鉱物といわれるもので、ケイ素の周りに酸素が四面体の形を作って結合したものが、3つの頂点を共有して六角状に連なったものがシートをつくる。このような鉱物と同種のもので、目に見える大きさの鉱物としてはウンモがある。
ウンモのある種のものは炭素質コンドライトにも見つかっているが、地球に産出するウンモには非常に大きな結晶に成長するものがある。