I 物理・化学関連システム
<解説> 濱田隆士
本章では、“水惑星”―地球の理解のための根幹あるいは基盤を形造っている諸領域を取り扱う。いうなれば“わが青い惑星”(ブルー・プラネット)ないしは“奇蹟の惑星(ほし)”(ミラクル・プラネット)と呼ばれる太陽系第三惑星の由来に関連する各研究分野からの総論的解説展開の場である。
近年の宇宙・地球科学での著しい進展によって、“水”の存在はこの宇宙にあってはむしろ普遍的ともいえる広範囲に及んでいて、その分布に関する情報は大幅に増大してきている。それだけに、地球という惑星がそうした「水存在環境」の中にあってどのような歴史を持ち、いかなる特性で他者と異なるかをよく理解する必要がでてきているといってよい。
地球は、大量の隕石〜微惑星の衝突の繰り返しによって誕生した、という単純なシナリオの展開は、旧来の隕石についての知識に基いていたのであったが、近年の「隕石学」の急速な伸びや彗星の頭の水に関する情報増加などによって、新たな“水物語”を書き起こすことを可能ならしめる素材が提供されるような時代に突入したといってよい。この間、惑星探査機各種の果たした役割は誠に大きい。
一方、地球自身についての研究進展も大変急速であり、また新事実の発見も相継ぎ公表されるなど、20世紀はまさに地球内部にさえ水が存在するという“水惑星”の本質が見えてきた時代であったとしても過言ではあるまい。そのような“地球内部水”が地球史にもつ意義の大きさには計り知れないものがあり、21世紀初頭の地球形成史展開を約束するものとなろう。地球は水惑星なるが故にまだ“生命の惑星(ほし)”でもあるから、水循環システムとして、大気、海洋〜河川、生物界を一連のものとして捉える視点がますます大切になってきた。まさにホリスティックな地球環境理解の枠組論の中心に、“水”が存在することになるのである。