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このバンギー郊外のウワンゴ地区には現在でもフランス大使公邸があり、水道もひかれているが、現地住民の多くは生活用水としてウバンギ河の支流を使用しており、このウバンギ河の支流にはビルハルツ住血吸虫の中間宿主となるBulinus属の貝がみられるので、このウバンギ河の支流での水浴などにより感染するものと判断される。なお本年度は短時間ではあったが、ウバンギ河の4年前に貝を採集した場所で貝の調査を行ったが、Bulinus属の貝は全く見出されず、以前より貝が減少しているのではないかと思われた。ビルハルツ住血吸虫症の患者に対してはプラジカンテルを投与したが、ウワンゴ地区は首都に近く数千人の住民が居住している上に、他地区からの転入者も多く、この地区における衛生教育を含めた予防対策は可成り困難で、今後もウワンゴ診療所の看護士や衛生士による努力が必要であると思われる。なお、ウワンゴ診療所には保健省の了解を得てプラジカンテルを供与し、常備するようにしている。

 

D) 血液検査成績

血液検査はブアール地区ケラ・セルジャン村の203名とバイキ地区バンザ村の73名の計276名について実施した。その成績は表5および表6に示すごとくである。

 

a) ミクロフィラリア検査成績

ミクロフィラリア検査成績は表5に示すごとく、ケラ・セルジャン村とバンザ村で採血した合計276名の中41名(14.9%)が糸状虫陽性であり、その中常在糸状虫陽性が32名(11.6%)、ロア糸状虫陽性が21名(7.6%)であった。これらの陽性者41名の中常在糸状虫のミクロフィラリアのみが陽性であったのは20名(48.8%)、ロア糸状虫のミクロフィラリアのみが陽性であったのは9名(21.9%)、両種のミクロフィラリアが陽性であったのは12名(29.3%)であった。この両種混合感染者12名は全検査数からみると4.3%となる。ケラ・セルジャン村で採血した203名の中23名(11.3%)が糸状虫陽性であり、その中常在糸状虫陽性が14名(6.9%)、ロア糸状虫陽性が15名(7.4%)であった。これらの陽性者23名の中常在糸状虫のミクロフィラリアのみが陽性であったのは8名(34.8%)、ロア糸状虫のミクロフィラリアのみが陽性であったのは9名(39.1%)、両種のミクロフィラリアが陽性であったのは6名(26.1%)であった。この両種混合感染者6名は全検査数203名からみると3.0%となる。一方バンザ村では採血した73名の中18名(24.7%)が糸状虫陽性であり、その中常在糸状虫陽性が18名(24.8%)、ロア糸状虫陽性が6名(8.2%)であった。これらの陽性者18名の中常在糸状虫のミクロフィラリアのみが陽性であったのは12名(66.7%)、ロア糸状虫のミクロフィラリアのみが陽性であったのは1名もおらず、両種のミクロフィラリアが陽性であったのは6名(33.3%)であった。この両種混合感染者6名は全検査数73名からみると8.2%となる。以上の成績を眺めてみると糸状虫陽性者はジャングル内に存在するバンザ村の陽性率は24.7%とサバンナに存在するケラ・セルジャン村の陽性率11.3%より高率であり、特に常在糸状虫ミクロフィラリアはバンザ村では糸状虫陽性者の全てから検出され、その陽性率がバンザ村では24.7%とケラ・セルジャン村の6.9%より高く、ロア糸状虫の陽性率は各々8.2%、7.4%と大差は認められなかった。これらの糸状虫症患者に対しては来年度にジエチルカルバマジンを投与する予定である。

 

 

 

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