日本財団 図書館


従ってマンソン住血吸虫症の診断にはMGL法が優れているが、厚層塗抹法も併用する方が好ましいと考えられる。最近中央アフリカ共和国においても道路が整備されて他地区との交流が頻繁となり、それに伴って元々その地区に居住している住民を駆虫しても他地区から患者が転入して虫卵を散布する機会が多くなっているので、診断された患者の治療のみならず、中間宿主対策無くしては完全撲滅は困難であると思われる。マンソン住血吸虫卵陽性であった者に対してはプラジカンテルを投与した。

 

f) 条虫症

厚層塗抹法で小形条虫卵がケラ・セルジャン村で1名(O.5%)から検出された。この虫卵陽牲者に対してはプラジカンテルを投与した。

 

B) 糞便検査による原虫嚢子検査成績

ホルマリンエーテル遠心沈殿法すなわちMGL法による消化管寄生原虫嚢子検査成績を纏めた結果は表3のごとくである。即ちケラ・セルジャン村では199名中原虫嚢子陽性者は126名(63.3%)で、バンザ村では63名中陽性者は27名(42.9%)であり、両村の合計では262名中153名(58.4%)であった。その内訳は赤痢アメーバ嚢子陽性がケラ・セルジャン村で22名(11.1%)、バンザ村で11名(17.5%)の計33名(12.6%)であり、大腸アメーバ嚢子陽性がケラ・セルジャン村で94名(47.2%)、バンザ村で17名(27.9%)の計111名(42.4%)、小形アメーバ嚢子陽性がケラ・セルジャン村で78名(39.2%)、バンザ村で11名(17.5%)の計89名(34.0%)、ヨードアメーバ嚢子陽性がケラ・セルジャン村で40名(20.1%)、バンザ村で8名(12.7%)の計48名(18.3%)であり、また、ランブル鞭毛虫嚢子陽性はケラ・セルジャン村で19名(9.5%)、バンザ村で7名(ll.1%)の計26名(9.9%)であった。ケラ・セルジャン村での原虫嚢子陽性率は昨年度67.8%、本年度63.3%とほとんど同じで、また、各原虫別の嚢子陽性率も何れも昨年度と大差が認められなかったが、バンザ村では原虫嚢子陽性者が昨年度64.9%、本年度42.9%であって、その中赤痢アメーバは昨年度28.9%、本年度17.5%、大腸アメーバは昨年度58.8%、本年度27.0%、小形アメーバは昨年度37.1%、本年度17.5%、ヨードアメーバは昨年度33.0%、本年度12.7%と何れも昨年度より本年度の方が減少していたが、ランブル鞭毛虫嚢子陽性者は昨年度4.1%、本年度11.1%とやや増加していた。これらの消化管寄生原虫嚢子陽性者153名に対しては、来年度にメトロニダゾールあるいはチニダゾールを投与する予定である。

 

C) 尿検査によるビルハルツ住血吸虫卵検査成績

ビルハルツ住血吸虫吸虫症検査のための尿検査は表4に示すごとく、ウワンゴ診療所においてのみ実施し、本年度は血尿を認める者および排尿痛などビルハルツ住血吸虫感染が疑われる者129名について遠心沈澱法による尿検査を行った。その結果4名(3.1%)からビルハルツ住血吸虫卵が検出された。昨年度の検査でも血尿を認める者あるいは排尿痛のある者77名中3名(3.9%)から虫卵が認められ、3年前の集団検査受診希望者では尿の提出者252名中10名(4.0%)からビルハルツ住血吸虫の虫卵が証明されており、総合的にみるとウワンゴ地区におけるピルハルツ住血吸虫症例は疫学的にみると有自覚症状者のうちの3〜5%程度の陽性率ではないかと推定される。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION