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また、ケラ・セルジャン村とバンザ村の検体で行った厚層塗抹法とMGL法の成績を纏めた嬬虫卵検査結果は表2のごとくで、262名中153名(58.4%)が陽性で、その内訳はケラ・セルジャン村で199名中121名(60.8%)、バンザ村で63名中32名(50.8%)であり、両検査法を併用した場合でもケラ・セルジャン村の方がバンザ村の陽性率より高かった。なお、厚層塗抹法でのみの成績はMGL法との併用の成績よりも陽性率が約30%程度低く、蠕虫症検診の際には両検査を併用することが必要であることが示された。

参考までにバンザ村における過去の陽性率を比較すると、8年前31%、7年前32%、6年前40%、5年前32%、3年前39%、2年前20%(但し厚層塗抹法のみ)、昨年度36%、本年度50.8%(厚層塗抹法にみでは20.6%)とその陽性率の減少はみられていない。これは本年も受診者73名中52名が新患者であるごとく、毎年初めての受診者がいるためであると思われる。なお本年度の陽性は鉤虫のみで、他の蠕虫感染者が1名も見出されなくなっている。一方、ウワンゴ診療所での陽性率は厚層塗抹法による成績であるが、8年前31%、7年前26%、6年前23%、5年前5.5%、4年前26%、3年前21.4%、2年前26.7%、昨年度9.9%、本年度16.2%であった。このウワンゴ診療所は同一対象者の追跡調査ではなく、集団検査受診希望者および診療所の外来患者を対象にしているため、治療効果判定などの意味は余りないが、地区全体の寄生蠕虫の蔓延状況をみるのには役立っものである。過去の経緯からみた結果、同地区の消化管寄生蠕虫の陽性率は大体25%前後であると判断されるが、これまで毎年陽性者に対する治療を実施するとともに、ウワンゴ診療所には抗蠕虫薬を供与しており、さらに技師の検査技術のレベルも向上しているので、この地区においても蠕虫の陽性率の減少傾向がみられているのではないかと思われる。特にこのウワンゴ診療所は以前日本大使公邸があった地区であることから、我々の調査団が毎年検診対象地区としていることもあって4年前から看護士1名、検査技師3名が増員され、現在は看護士3名と衛生検査技師6名が勤務しており、週に1〜2回は医師の診察があり、また電気があるので過去に調査団が供与した遠心器および顕微鏡も常備されている。その他付設の産院には5名の助産婦が勤務しており、保健・医療施設としては比較的恵まれた条件となっている。

以下の各蠕虫症について、厚層塗抹法およびMGL法による検便成績について述べることとする。

 

a) 鉤虫症

中央アフリカ共和国における寄生蠕虫疾患のうち、最も高率に見いだされたのが鉤虫症である。ケラ・セルジヤン村では199名中91名(45.7%)、バンザ村では63名中蠕虫卵陽性全員の32名(50.8%)、ウワンゴ診療所では厚層塗抹法による検便のみであるが、241名中21名(8.7%)が鉤虫卵陽性であった。その陽性率はケラ・セルジャン村およびバンザ村では従来の集団検査の成績より高く、昨年度の陽性率20%前後の約2倍の感染率であった。これは5月からの雨期の雨量が例年よりも多かったためではないかと推測される。ウワンゴ診療所は一昨年度の10.8%に比しやや減少傾向が認められ、昨年度の7.4%と大差は認められていない。陽性者に対してはコンバントリンの投与を行ったが、鉤虫症対策としては雨期と乾期の変わり目の年2回の投薬が好ましいと判断される。

 

 

 

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