バンザ村では73名の受診者があり、63名はその日に糞便の提出があったので、厚層塗抹法による検便を現地で行い、蠕虫陽性者すなわち鉤虫陽性者13名に対してはその場でピランテル・パモエイトを投薬するとともに、仕事に出かけて留守であった陽性者については、診療所の看護士に駆虫剤を渡して治療を依頼した。なお、便量の少なかった4名については厚層塗抹法のみを実施し、検査終了後に便を提出した別の4名についてはMGL法による処理を行って、他の検体とともに日本に持ち帰って検査を行った。また、73名についてはマラリアおよび糸状虫症検査のための血液塗抹標本を作製した。なお、ここ数年の検診でオンコセルカの検査結果が全員陰性であるので皮膚検査は行わなかった。
ウワンゴ診療所では241名の糞便提出者があり、厚層塗抹法による検便の結果39名が蠕虫卵陽性であり、また、血尿を認める者および排尿痛などビルハルツ住血吸虫感染が疑われる者129名について遠心沈殿法による検尿を行い、4名のビルハルツ住血吸虫卵陽性者が検出された。これらの寄生蠕虫症患者に対してはコンバントリンとプラジカンテルを診療所長に薬剤を渡して投与を依頼した。
2) 検診方法
検診はケラ・セルジャン村およびバンザ村では検便と血液検査を実施し、滞在期間が短く、また受診者が多く、また、ここ数年陽性者がいないことから本年度も皮膚検査を割愛した。ウワンゴ診療所では検便と尿検査を行った。今回も晴天であった事から、ケラ・セルジャン村では健康手帳確認と血液塗抹標本作製は現地の木陰で行い、厚層塗抹法による検便および血液標本処理はブアール病院の検査室を借用して実施した。バンザ村での検診および厚層塗抹法による検便はすべて野外の木陰で行い、糞便の遠心沈殿処理と血液塗抹標本作製は現地に電気がないため、材料をウワンゴ診療所に運んで行った。また、ウワンゴ診療所における検便および検尿は診療所の検査室で行った。われわれに同行したヤヤ医師は受け付けの手伝いをしてくれると同時に、現地住民の寄生虫症以外の患者の診療を実施した。
a) 血液検査
受診者のうちケラ・セルジャン村の203名およびバンザ村の73名の指頭血より採血した血液を使用して、濃塗及び薄層の血液塗抹標本を作製した。これらの標本は風乾後日本に持ち帰り、濃塗標本は蒸留水で溶血して薄層塗抹標本とともにメタノール固定後、ギムザ染色を行ってミクロフィラリア、マラリア原虫などの検索を実施した。
b) 糞便検査
ケラ・セルジャン村の199名およびバンザ村の63名については現地で厚層塗抹法による蠕虫卵検査を行うと同時に、ヌシクのチューブに糞便を入れてホルマリン固定をして日本に持ち帰り、MGL法(ホルマリン・エーテル法)による遠心沈殿法を行って、蠕虫卵と消化管寄生原虫嚢子の検査を行った。