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一方、読む必要はないという意見の根拠は、先入観を持たずに自分の感覚を大切にするべきというものであった。

実際、過去の報告書を読んで研修に臨んだ参加学生は半分程度であり、どのような形でフィールドと関わりたいか、という各人の目的意識や嗜好にもよるのであろう。予習の試みとしては自主的に、国外研修の初日、フィリピンやWHO、JICAに関する勉強会が催された。基本情報をメンバーで共有することができ、有意義だったとの声が挙がった。

 

*質疑の態度

レクチャーや説明の際の質疑について、もっと周囲への配慮が必要なのではないか、という意見が出た。一部の人の発言が目立つケースが見受けられたことに対するコメントである。確かに、質問に使える限られた時間をなるべく多くの人が利用できるよう配慮は必要であろう。一方、疑問に思ったことはなるべくその場で表明する方が、質問者、発表者双方にとって有益であるとの意見もあった。

英語での質問に関して、個人対個人の質問では英語で意思疎通をとれている人でも、全体を前にして躊躇してしまうケースが見受けられる、との指摘があった。これについて、文法や語法を少しくらい間違えてでも意思を表明する姿勢、いわば、いい意味での図太さも必要なのではないか、との意見があった。

何れにしても、質問はしたいものの、なかなか実行に移せない人は存在する。そのような人が発した小さな声、懸命に挙げた手に配慮する、そのような心の余裕は必要との意見があった。

 

<メッセージ>

最後に、研修を踏まえて、全体に伝えておきたいメッセージを自由に発言してもらい、指導専門家であるバルア先生からのメッセージをもって総括とした。

 

*多様性と相対化

医学部入学前に社会科学系の学部で学んだ経験のある参加学生から、医学を学ぶ我々へのメッセージがあった。医学部の世界では、ともすれば視野狭窄に陥りがちである。物事を捉える際、善悪、良否という二元論ではなく、バランスの中で考える姿勢が必要なのではないか。その為に、価値観の多様性を尊重し、物事を相対化する能力を涵養して欲しいとの旨が伝えられた。研修中、時として既存の価値観が揺らぐような場面に遭遇した我々学生にとって、示唆に富むメッセージだったのではないだろうか。

また、医療福祉を専攻する参加学生から、「チーム医療を実践する上で周囲をよく見て気を配っていればコメディカルとの関係も上手くいくのではないか」、とのアドバイスがあった。医療現場において他職種の価値観を尊重し、医師の価値観を相対化できれば、チーム医療における齟齬も回避できるのかもしれない。

 

 

 

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