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前者の意見として、貧困問題の解決には教育が大切というが、政府や富裕層にこそ貧困問題を理解するための教育が必要なのではないか、という意見があった。この意見に関連して、国内での富裕層と貧困層の対話促進および橋渡しは、海外からの協力こそが功を奏する分野の一つなのではないか、という意見もあった。

後者の意見としては、どのような集団でも標準に比べて偏りは存在し、貧富の差が無くなることはない、しかし、その差を詰めることは可能であり、ここに国際協力の目的がある、というものがあった。

 

*何故国際保健なのか? 〜公衆衛生と臨床医学

将来、国際保健に関わるとすれば、何故するのか?ということが話題になった。「誰かのために」という姿勢ではなく、「いかに自己満足できるか」という姿勢が大切であるという意見がある一方、「そこまで割り切れない」、「必要とされているかどうかが大切」との意見があった。ニーズと自分の満足とでいかに折り合いを付けていくかが問われるのであろう。

「何故するのか」に付随して、どういう立場で関わるか、ということも話題になった。今回フィールドで見学した活動は主に公衆衛生的アプローチであり、臨床志向の参加学生からは戸惑いの声も聞かれた。その代表的意見として、臨床では自分が患者さんに与えた分の見返りが見えやすいが、公衆衛生では見えにくい、というものがあった。これは自分が仕事をする上で何を重視するか、どういう点に幸せを感じるか、といった価値観の違いが影響しているとの指摘があった。つまり、臨床志向の人は目に見える見返りをやりがいに感じる傾向があり、公衆衛生志向の人は直接的見返りよりも、長い時間がかかっても大きな変化をきたすことにやりがいを感じるのではないか、ということである。また、公衆衛生志向の学生の意見としては、臨床医学は主に病気を持った人、ある意味では特殊な人、を扱うが、公衆衛生では人の生活全般を扱うことができる、というものもあった。

もっとも、公衆衛生、臨床医学は明確に区別できるものではなく、どちらの立場にいようとも互いの視点を持つことが必要との指摘もあった。日本の医師法で医師の役割は『医療及び保健指導を掌ることによって「公衆衛生の向上及び増進に寄与し」、もって国民の健康な生活を確保するものとする』と定められている。人々の健康を目標に掲げる以上、臨床医であろうとも公衆衛生的視点は必要なのであろう。

尚、臨床志向の学生からは、臨床を基本に置きながらどのように国際保健に関わっていくかという点が今後の課題として挙げられていた。

 

<反省点>

*予習の必要性

予習の一環として過去の報告書をある程度は読んでおくべきであったという意見が出されると、事前に報告書を読んでおくべきか否かで意見が分かれた。ある程度は読んでおいた方がいいという意見の根拠は、訪問先の基礎知識程度は頭に入れておくべきであり、その手段として過去の報告書は有用である、というものであった。

 

 

 

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