(6) Dr. Ramosの講義
病院を案内してくれた後、JICA出資という建物の一室で、Dr. Ramosからフィリピンの地域医療体制の変化について講義を受けた。
フィリピンでは1994年から医療分野において地方分権化が進んだ。それ以前は政府がProvincial Hospital (PH)・Rural Health Unit (RHU)・Barangay Health Station (BHS)のすべてを管轄していた。しかし、現在はPHが政府の管轄下に、そしてRHUとBHSが市長の管轄下におかれている。変化には医療従事者の中でもまだ多少の混乱があるとのことだった。
また、Dr. Ramosは私達学生一人一人に、なぜ医療従事者になる道を選んだかの動機を尋ねた。そして一言一言アドバイスをしてくれた。普段こうしたことを人前で答える機会がない私達にとって、人前で自分の意見を表明するという事がいかに大切で、また自分自身のためになるかということを実感できた。
そして、Dr. Ramosの「国際協力は一方的なものではない。互いに得るものがあるのだ」という言葉にとても心温まるものを感じた。国際協力という大きな活動も、もとは1人の人間と1人の人間からのコミュニケーションからスタートするものである。相互関係の上に成り立っているものなのだから、国際協力も互いに得るものがあるというのは当たり前の事なのだ、と改めて実感させられた。 (水上)
2) 現地JICA日本人専門家からの講義
1] 湯浅医師の講義 〜人口問題を考える
2] 九里医師の講義 〜救急の現場から国際保健へ
夕食後、宿にて、タルラックのJICA事務所で働く二人の医師の講義を聞くチャンスが得られた。白い壁を背景にノートパソコンからのスライドを映しながらの講義であった。
1] 湯浅資之医師の講義 〜人口問題を考える
途上国において、人口増加と貧困と環境破壊が密接に関わることが指摘されている。世界人口は20世紀になって爆発的な増加を示しているが、とくに戦後の人口増加は人工的な要因によるもので、だからこそ今後10年の政策決定と、個々人の活動で変えられる可能性のあることである。
世界的人口対策は、従来家族計画か経済開発かという視点で論じられてきたが、1994年、世界人口会議のカイロ会議において、方向の大転換がなされ、子供と女性の基礎保健と教育を重視する“reproductive health and rights”の概念が導入された。経済中心から人間中心の開発への変化ともいえる。
これを反映して国際協力のあり方も、家族計画と母子保健とを中心としたものに変化してきた。タルラックでは、JICAはフィリピン厚生省と共同した形で、
1. 統合母子保健プロジェクト