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Mrs. Manlutacが担当する4つの村では上記に述べたようにBHSが良く機能し、地域の住民の健康にとても貢献しているという印象を受けた。また、ここのBHSはとても綺麗に整頓されていて、彼女の仕事にかける熱意が窺われた。彼女はお産があるたびにその家庭を訪ね、お産に立ち合っている。彼女は自分が立ち合ったお産の日付と子供の名前を自分のメモ帳にも記録していて、そのメモ帳はもうすでに14冊目になっていた。彼女からは地域の住民の健康を支えているという誇りが感じられた。実際、彼女は州の上官からも高い評価を受けている優秀な保健婦であった。

彼女は“We can promote. They can prevent.”という言葉を強調していた。この言葉は、まさに公衆衛生行政のあり方を言い表している言葉だと思う。そして彼女はまさにそれを行いつつある人なのだと感じた。

 

(4) Botika Binhi訪問(地域住民のための共同出資の薬局)

ボティカビンヒ(Botika Binhi)は、1980年頃に生まれた地域住民共同出資の薬局である。そのしくみとは、いくつかの村ごとに自主的に設置され、住民から会費をとるが、市価より安く薬を販売する形態である。町から遠く必要な時に薬が手に入らない、また薬の市価が高いなどの地方の村の状況が背景にある。実際は責任者の手腕や人気に負うところが大きく、運営に問題を抱えるところも多いというが、訪問したボティカビンヒは非常に好調な、珍しいケースだそうである。

 

私達が訪れたボティカビンヒは個人の家の一室にあった。高床式住宅の約6畳ほどの1室に消炎鎮痛剤・抗生物質・Ca拮抗薬・β2刺激薬・ビタミン剤・ヨード入りの塩など、たくさんの薬が並んだ棚があった。責任者のMrs. Beverly Reyesは、Midwifeの資格を持ち、かつてBarangay Health Workerとして働いていた経験のあるまっすぐな目をした方であった。

ここのボティカビンヒは1995年に26人のメンバーによって2,480ペソで設立されて以来、年々規模が大きくなってきている。ここはこのボティカビンヒがある村と周辺の5つの村の住民が利用している。ここでは毎月の会費に1ペソのみ徴収していて、ほかに会費は徴収していない。月会費は、設立当時は10ペソだったが3年後には5ペソになり、現在では1ペソになっている。運営が好調である証拠である。しかし、ここでも月1ペソの会費が払えないためメンバーになれない住民が少しではあるが存在する。

また、ここのボティカビンヒでは市場よりはるかに安い値段での薬の販売だけでなく、行事があるときにイスやテーブルを貸し出したり、米を安く販売したりしているという。

 

ほかのボティカビンヒの状況を聞いたところ、会費は各ボティカビンヒのおかれている経済状況に左右されていて、利益のあるボティカビンヒでは会費が安く、利益のないボティカビンヒでは会費が高くならざるを得ないという。さらに、薬の安値の他のサービスは各ボティカビンヒによって異なり、利益の一部を現金でメンバーに還元しているところもあるということであった。

 

 

 

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