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スカベンジャーたちは1日400台のトラックが運び込む廃棄物の中から、換金可能なものを集めることで、力のある男性なら1日に1人150ペソ以上、子供でも50ペソ以上稼いでいた。平均的な世帯(両親に子供4〜5人)なら家族の収入を合わせると、月収にして公務員の初任給以上になる。ここでは教育や技術を持たなくても働くことができ、換金可能なものが手に入らないときはゴミの中から拾ってきたものを食べる事で生を繋ぐ事が出来た。

 

(2) 崩壊事故について

2000年7月10日朝8時頃、住居地域間近の高さ50m、直線距離にして約100mのゴミ山が約3haに渡り崩壊し、麓に広がる約100戸の住宅を飲み込んだ。救助活動により、事故当日は約50人がゴミと瓦礫から救出され、病院で手当てを受けた。しかし、翌日からは生存者の発見はなく、20日までの収容遺体は220体を超え、最終的な犠牲者は300人とも500人とも言われている。我々が行ったときには、すでに救助活動は行われていなかった。

事故当日は月曜日で、発生時刻はいつもであれば登校のために子供たちの多くは自宅に居ない筈であった。が、当日は交通ストライキが予定されており、多くの小学校・高校が臨時休校になっていたため、犠牲者の半分は家にいた子供達であった。

ゴミ山崩壊の原因は、台風4号と5号の接近のため、8日間降り続いた豪雨がゴミ山内部に大量に浸透し、その雨水により内部物質の膨張が亀裂を招いたためと考えられている。私たちが視察に行った日には、救援物資の配給があり、多くの人々が行列を作っていた。

 

(3) SALT訪問とゴミ山登り

パヤタスは私たちの想像を遥かに上回る劣悪な環境だった。バスから降りると汚れた海のような匂いがしたが、同行の穴田さんによると、ゴミ山から発生するガスの匂いらしい。現地で活動しているNGOの「SALT」の小川博さんと伊藤洋子さんにお話を伺った後、崩落の跡も生々しいゴミ山に登った。

 

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ゴミ山を登る学生たち

 

 

 

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