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中味の濃い講義、ただでさえついていきにくいのに加え、まだ慣れない専門用語の次から次へと出てくる英語、となかなか大変な午前中であった。講師の方々はどなたも、地域という広い視野で問題を見つめており、疫学、経済、などのきちんとしたデータに基づいて比較を行い、問題点を整理し対策を出していたのが印象的であった。国際組織として実施にはどこまで手段を行使できるのかという疑問も抱いたが、ポリオ根絶の裏方は国際組織でなければ出来ないことだと感動さえ覚えた。 (八島)

 

2) JICAマニラ事務局訪問

JICAマニラ事務局 (Japan International Cooperation Agency Philippines office) は高層ビル街であるMakatiの、ひときわ近代的なビルのワンフロアに在る。そのJICA事務局で現地日本人スタッフの升本清次長と有本祐子さんからお話を伺った。JICAの活動を紹介するビデオを見たあと、マニラ事務局の紹介、活動説明、質疑応答となった。

現在JICAマニラ事務局では、日本人約20人、現地フィリピン人約40人の計約60人が活動している。日本のアジアに対するODAはインドネシア、タイ、中国、インド、フィリピンの順に高く、JICA内では3位になる。フィリピンは人口の30%ほどが貧困層にあるが、国民1人当りのGNPは$1200前後であり、途上国としては豊かな国に入る。日本のODAは国民1人当りのGNPが$1500以下の国を対象としており、フィリピンヘの援助も数年以内に終了するかもしれない。

フィリピンの人口は現在7500万人程であるが、人口増加率は年2〜3%であり、程無く1億人を突破すると予想される。この人口増加率の背景には、フィリピン人の多くはカソリック教徒であり、避妊・中絶に対して非容認的ということがある。そして、家族の絆を大切にする面も併せ持つ。

フィリピンは現在、地方分権化している最中であり、病院は地方自治体で運営したいとしているし、保健省も現在の1/10に縮小したいと政府は考えている。しかし、予算の問題と、Mayorが変わると政策も変わるため長期プロジェクトの実施が困難という状況から、これらの動きに対してJICA staffは多少懐疑的に見ている。

JICAは外務省の1機関であるため、条約に縛られ、基本的には国対国の援助が主流であるが、最近になって地方自治体からの案件も取り上げるようになった。しかし、フィリピン人は多少援助慣れしている所があり、取り上げられない案件も多く、年間に無償援助は100件中2〜3件ほどである。

マニラ事務局の日本人スタッフの14〜15人は厚生省の人事により日本から派遣された方々であり、プロジェクトの運営実施を行っている。企画班というところではフィリピン各地から要請を挙げてもらい、それを取りまとめ日本での審査に送り、他のドナーとの連携も取りまとめている。

日米協力の柱がいくつかあり、保健医療分野はその目玉の1つである。AIDS projectもその中の1つであるが、日本が機材・資金を提供し、アメリカがそれを使うという。このやり方では日本の顔の見えづらい援助となってしまい、よく批判されている。つまりアメリカが日本の資金で良い顔をしている訳である。日本人には英語を習熟していない専門家が多い。現地は英語が交流手段の中心なので、英語下手は日本の弱点となってしまっている。近年主流となっている参加型のプロジェクトのためのノウハウやcommunication skillsを身に付ける事が課題となっている。

 

 

 

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