5] Dr. 小川の講義
最近のWPRO地域内の医療トピックについてのお話しであった。WHO新事務局長のテコいれ政策の禁煙対策も挙げられた。他にも、中国の一人っ子政策の結果、若者の肥満が増加している、なぜか各国で若者の自殺率が増加してきているという興味深い話もあった。「健康」を考えるとき、杜会や文化などの環境を考慮する必要があることを教えられた。
6] Dr. A. Ronの講義
疾患についてでなく、医療資源の適切な使い方、医療経済についてのお話しであった。日本の現状についてもよく御存知のようで、国民皆保険制度の抱える問題を指摘して、我々に「外から」自分の国を見つめることを教えてくれた。論点は色々なことに及んだが、切り口は明快で、データに基づく論理的なものであった。
7] Dr. 佐藤の講義
WHOの進めるポリオ根絶計画の、WPRO内の実施担当者としての経験を語って下さった。全国一斉投与のワクチン摂取日を設ける戦略が知られるが、国も充分に把握していない、水上生活者、国境、川をはさんで暮らす人々へは、特に対策が必要であった。前者には、空からひたすら写真をとって、生活者を見つけては船で遡ってワクチンを飲ませに行き、後者には隣国同士で同じ日にワクチン投与を実施してもらったという。
そのような地道な、労力を要する活動の結果、現在、WPRO地域の根絶が委員会に書類審査中であるという。このワクチンの費用は、日本が40%を負担しているのは誇りをもっていいと指摘された。
8] Dr. R. Nesbitの講義
予防というのは、個人のレベルと、そして、杜会のレベルとの二つのアプローチで行うことが重要であるという説明があった。さらに、WHOが出来ることとして、各国政府に働きかけること、技術的な助言を行うこと、保健政策を助言すること、新しい技術を開発することなどがあり、これからは他の国際組織等との協力も重要となるだろうということであった。