8月2日(水)
○本日のスケジュール・内容
1) ハンセン病について
2) 結核について
1) ハンセン病について講義
(座長)国立療養所 多磨全生園 園長 菊地敬一 先生
(1) ハンセン病の病理と国際協力
(2) ハンセン病の基礎と臨床
(3) 園内の病院見学
(4) 高松宮記念ハンセン病資料館見学
(1) ハンセン病の病理と国際協力(9:00〜10:00)
国立感染症研究所 ハンセン病研究センター長 松尾英 先生
ハンセン病とは、かつて、らい病とも言われ、四肢の欠損や顔貌の変化を伴うために、どの国においても社会的、文化的な偏見を生じた病であった。松尾先生は病理学をかつて専攻されており、第二次世界大戦後に開発されたハンセン病薬の開発、そして患者の治癒していく姿を目の当たりにされ、驚きを隠せなかったという。しかし、患者にとっては外見の変化という後遺症は残り、未だ多くの問題を抱える疾患である。
ハンセン病に対して、日本は奈良時代の昔から「患者だけ集めて隔離」という方針であって、その極は「らい予防法」であり、この全生園も、かつては患者が生きては出られない施設であった。法が廃止された今でも患者の社会復帰への道は遠い。一方、タイやフィリピンにおいては「ハンセン病患者の村」があり、そこで、患者は家族とともに生活していたという。現在でも患者は自活の道を見出し、社会の中で暮らしているという。この両者を見たとき、いわゆる途上国に対するときも我々は謙虚になることを学ばねばならないと思わないだろうか。国際協力というときは自分のやり方を押しつけるのでなく、相手を良く知り、尊重することが大事なのだ。
ハンセン病患者は化学療法の開発で年々減少を続けている。まだ患者の多い途上国への援助を考えてみよう。停電の多い途上国に電源の必要な顕微鏡はあまり役立たない。それよりも、簡便なハンセン病診断キットでもあれば役立つだろう。相手の現状を良く知り、これまでの歴史に基づき、かつ高度な技術の裏付けをもつ技術協力が必要ではないだろうか。