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11:50〜12:30

「開発途上国における寄生虫症の現況と国際寄生虫対策」

慶應義塾大学医学部 熱帯医学・寄生虫学教授 竹内勤 先生

 

1) 2000年7月に開催された九州・沖縄サミットで、日本は途上国の感染症対策に今後5年間で30億ドルを拠出することを発表した。これは「沖縄感染症対策イニシアティブ」といわれ、HIV/AIDSや結核、マラリア、ポリオ、寄生虫症が対象疾患とされている。日本のこの政策は、寄生虫対策を効果的に推進するための人材育成と情報交換を提案した、1998年の国際寄生虫対策(いわゆる「橋本構想」)から一貫している。中でも重要なのはマラリアと腸管寄生虫である。

2) 重症マラリアは世界の死亡原因の高位に位置しており、WHOは1957年にマラリア根絶計画を、1969年にマラリア制圧計画を立てたがいずれも失敗に終わっていた。現在は昨年就任したブルントラント事務局長の下、三回目のマラリア根絶計画のロールバック・マラリアイニシアティブがとられている。マラリアの流行の原因は大規模な開発事業や人口移動、都市の拡張、異常気象、自然災害、紛争などで、過去の根絶計画が失敗に終わったのは、クロロキン耐性マラリアの出現や蚊の習性の変化のためである。今回は、薬剤をしみこませた蚊帳配布という原始的対応に加え、有効な薬剤開発や学校保健、教育などへの対策も含まれている。

3) 腸管寄生虫には、回虫、鉤虫、鞭虫などがある。対策が必要なのは、途上国で、貧血の原因となって小児の身体発育に影響を与えるからである。寄生虫対策は、対費用効果が最も良いとされている。学校単位で住民を教育していく方式が効果的で、実は戦後、目本はこの方式で寄生虫を激減させた。日本が誇っていい独自の方式なのだ。

 

13:30〜15:30 フリーディスカッション(Part 1)―国際協力を中心に―

(座長) 国立国際医療センター 国際医療協力局 局長 田中喜代史 先生

ほか 厚生大臣官房国際課国際協力室 室長 遠藤弘良 先生

国立国際医療センター

国際医療協力局 派遣協力第二課 課長 建野正毅 先生

国立国際医療センター 国際医療協力局 計画課 課長 猿田克年 先生

 

国立国際医療センター国際医療協力局や厚生省、国立病院、それぞれの立場から国際協力に関する役割を伺った。

国際医療センターの国際医療協力局では、医師を派遣し、自助努力サポート型・自立発展型の協力をしているということだった。日本の国際協力は病院・機材などの提供といったハード面の協力からソフト面の協力へと移行しているという。公の場での日本の顔が見えないと言われているが、現場経験のある先生からは、日本ほど現地に入り込んでいく国はないという指摘もあった。最近の特徴はNGOとの協力だそうである。

 

 

 

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