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読売日本交響楽団とはもう長いおつきあいで、始まりはオーケストラが創立してすぐの頃に第4番と第5番の初演をしたことからです。それが縁となり、オーケストラの基盤を固めるために僕が指揮とお話しをして読響が演奏するテレビ番組(NTV「だんいくまポップス・コンサート」1970-1976年)が5年半続きました。そのことで相互理解が生まれ、指揮者としての僕、作曲家としての僕をよく知っている特別な関係が生まれたのです。1994年から95年にかけて、6つの交響曲の全曲演奏会も行いました。

―交響曲とはどういうものなのでしょう。

團 僕の頭の中で、「オペラ」と「交響曲」と「合唱付きの管弦楽作品」は、山脈の中の3つの大きな峠、高い山のようなものです。オペラはオーケストラと声の結びつきを極めるもの、交響曲はオーケストラ自体を直視して技術的にも、もっとも研ぎ澄まされている世界です。

交響曲を作曲すること自体が、作曲家にとってもっとも難しく、真剣な世界のひとつなのです。オペラには台本があります。よりかかるところがある。交響曲にはよりかかるところがひとつもないのです。自分自身の美学だけで構築していくものです。これはまた、修練のためにもやっていかなければならないものでもあります。僕にとって交響曲の作曲とは、作曲家としての自分を形成するための大切な仕事なのです。

 

(2000年10月30日 神奈川・横須賀の自宅にて)

 

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