◎Interview
「交響曲」創作の周辺
お話し 團伊玖磨
―これまで6曲ある交響曲から今回、第4番と第6番「HIROSHIMA」をプログラムに選ばれました。
團 そうですね。今回の演奏会のプログラムにこの第4番と第6番「HIROSHIMA」を選んだ理由は、僕の交響曲の中で、この2曲が演奏される回数も多く、また国際的評価が確立されているからです。6つの交響曲の中で、第4番はもっとも純粋でスタンダードな4楽章形式であり、一方第6番は3楽章形式で歌と日本の笛が加わる個性的な曲と言えるでしょう。
―それぞれの作品についてお聞かせくたさい。
團 第4番は、神奈川をイメージして書きました。第4楽章では、「ばばぎやぎやぎや ぎやまのきつねが…」というわらべ唄の節が登場します。このメロディは、幼少のころよく聞かされていたものです。
第6番に「HIROSHIMA」というタイトルをつけたのは、広島の人々からの委嘱であり、広島交響楽団による初演であったこと、そして原爆という大きな事件を扱うのに避けては通れないと思い、はっきりとこのタイトルをつけたのです。作曲にあたり、原水爆反対の運動の中での単なるアジテーションとしての音楽、そうした目的を持つ政治運動としてではなく、音楽を書きたかったのです。なぜなら交響曲というからには、完全な音楽のもっともまじめな領域にあるものですから。
そして、英国の詩人ブランデンの書いた、広島の復興と人間の再生、つらいことを経てその先に本当の人間の生命をみたという詩に出会い、その詩を“思想”として考えたのです。
―第6番「HIROSHlMA」には歌のほかに横笛も登場しますね。
團 この曲に歌と日本の笛をいれることは、当初より考えていました。歌(ソプラノソロ)を入れたのは、ブランデンの詩を曲のクライマックスではっきりと歌うことが大切と考えたからです。日本の笛を考えたことも、その音が精神的な不思議な表現力を持っているからです。集中とか拡散とか、大変エネルギッシュなものなのです。また、広島地方の民謡も吹いてほしかったこともあり、自然理に使うことになりました。
―オーケストラについてお聞かせください。
團 オーケストラは、音楽の合奏の中でもっとも純粋で至高な世界です。オーケストラの世界にあこがれを持っています。例えれば、花畑なら僕には最高に大切な花畑なのです。